科目B|B3 データ活用の組織文化の醸成
要望と制約を満たす共有案
シラバス案 Ver.0.1(2026年8月31日公表)の『B 3-2 協働によってデータ活用を促進する環境の形成・定着』
食品卸売業のA社では、営業部、物流部、経理部が、取引のデータを、それぞれ別のファイルで管理している。X部長は、3つの部門が同じ内容のデータを使えるように、全社で共有するデータを1つ作ることにした。共有案をまとめる役は、Yさんである。
Yさんは、各部門から、ほしいデータの内容と、ほしい理由を聞き取った。結果を表1 に示す。共有データの作成と更新は、IT部門が行う。情報管理の担当などに確認した制約を、表2 に示す。
Yさんがまとめた共有案は、次のとおりである。共有する項目は、【a】とする。集計の単位は、【b】とする。
Yさんは、共有データでは目的を満たせない要望について、次に話すことにした。話す相手と中身は、【c】である。
表1 各部門の要望
| 部門 | ほしい項目 | ほしい集計の単位 | ほしい理由 |
|---|---|---|---|
| 営業部 | 売上金額、出荷数量 | 取引先ごと | 取引先ごとの売上を見るため |
| 物流部 | 出荷数量、配送回数 | 地域ごと | 地域ごとの配送の計画を立てるため |
| 経理部 | 売上金額、仕入単価 | 地域ごと | 売上と原価から利益を出すため |
取引先は、それぞれ1つの地域に属する。ほしい集計の単位は、これより細かいデータがあれば、各部門で集計し直せる。
表2 共有データの制約
| No. | 種類 | 内容 |
|---|---|---|
| 1 | 共通 | 共有データは1つだけ作る。部門ごとの別版は作らない。 |
| 2 | 項目 | 仕入単価は、取引先との契約により、社内にも出せない。仕入単価から計算した原価金額は、出してよい。 |
| 3 | 個人情報 | 取引先には個人事業主が含まれる。取引先ごと、またはそれより細かいデータは、個人の取引が分かるので、共有データには入れない。 |
| 4 | 部門のデータ | 各部門が、自部門のデータで集計することは、これまでどおり認められている。 |
設問
本文中の【a】〜【c】に入れる字句の組合せとして、最も適切なものを解答群の中から選べ。
- 共有する項目は、【a】とする。
- 集計の単位は、【b】とする。
- 話す相手と中身は、【c】である。
| 記号 | 【a】 | 【b】 | 【c】 |
|---|---|---|---|
| ア | 売上金額・仕入単価・出荷数量・配送回数 | 地域ごと | 営業部と、自部門のデータで集計を続けると話す |
| イ | 売上金額・仕入単価・出荷数量・配送回数 | 取引先ごと | 経理部と、自部門のデータで集計を続けると話す |
| ウ | 売上金額・原価金額・出荷数量・配送回数 | 伝票1件ごと | 営業部と、自部門のデータで集計を続けると話す |
| エ | 売上金額・原価金額・出荷数量 | 伝票1件ごと | IT部門と、部門ごとに別版を作ることを話す |
| オ | 売上金額・仕入単価・出荷数量・配送回数 | 伝票1件ごと | 経理部と、自部門のデータで集計を続けると話す |
| カ | 売上金額・原価金額・出荷数量 | 取引先ごと | IT部門と、部門ごとに別版を作ることを話す |
| キ | 売上金額・原価金額・出荷数量・配送回数 | 地域ごと | IT部門と、部門ごとに別版を作ることを話す |
| ク | 売上金額・原価金額・出荷数量・配送回数 | 地域ごと | 営業部と、自部門のデータで集計を続けると話す |
| ケ | 売上金額・原価金額・出荷数量 | 取引先ごと | 経理部と、自部門のデータで集計を続けると話す |
正解:ク a:売上金額・原価金額・出荷数量・配送回数 b:地域ごと c:営業部と、自部門のデータで集計を続けると話す
ポイント
シラバス案(Ver.0.1)にある項目です。問われるとしたら、部門ごとの要望と制約を表で読み、共有できる内容を決めたうえで、共有データで満たせない要望について、だれと何を話すかを選ぶ力です。
考え方と解き方
表1 は部門ごとの要望と理由、表2 は共有データの制約です。要望をそのまま全部入れると、制約にふれる所が出ます。制約にふれる要望は、理由を読んで、別の方法で満たせるかを見ます。それでも満たせない要望は、制約の理由を確かめ、変えられない制約なら、認められた代わりの方法を、要望を出した部門と話します。
- 表1 の『ほしい項目』の列を3部門ぶん合わせると、売上金額、出荷数量、配送回数、仕入単価です。表2 の No.2 の行より、仕入単価は出せません。表1 の経理部の『ほしい理由』の列は、売上と原価から利益を出すことで、原価金額は出してよいので、この目的は原価金額で満たせます。共有データは1つで全部門が同じ内容を見る(表2 の No.1 の行)ので、ほかの項目と合わせて含めます。したがって a は、売上金額・原価金額・出荷数量・配送回数です。
- 表2 の No.3 の行より、取引先ごと、またはそれより細かいデータ(伝票1件ごと)は、共有データに入れられません。表1 の『ほしい集計の単位』の列で、物流部と経理部は地域ごとで、表1 の注より、細かいデータがあれば地域ごとには集計し直せますが、取引先ごとのデータは共有できないので、共有データの単位は地域ごとです。したがって b は地域ごとです。
- 表1 の『ほしい集計の単位』の列で、取引先ごとを求めているのは営業部だけで、『ほしい理由』の列は取引先ごとの売上を見るためです。共有データは地域ごとなので、この目的は満たせません。表1 の経理部の『ほしい理由』の列は、原価金額で満たせるので、経理部の要望は残りません。物流部は地域ごとで満たせます。表2 の No.1 の行より、営業部用の別版は作れません。表2 の No.4 の行より、各部門が自部門のデータで集計することは認められているので、営業部と、自部門のデータで集計を続けることを話します。したがって c は、営業部と、自部門のデータで集計を続けると話す、です。以上から、a は売上金額・原価金額・出荷数量・配送回数、b は地域ごと、c は営業部と自部門のデータでの集計を続けると話す、で、ク です。
ほかの選択肢
- a が売上金額・仕入単価・出荷数量・配送回数・売上金額・原価金額・出荷数量の組合せ(ア、イ、エ、オ、カ、ケ):仕入単価を含む項目:要望をそのまま全部入れた形ですが、表2 の No.2 の行のとおり、仕入単価は出せません。経理部の目的は原価金額で満たします。配送回数を含まない項目:表1 の『ほしい項目』の列で、物流部が配送回数を求めています。これを含めないと、物流部の要望が満たせません。
- b が伝票1件ごと・取引先ごとの組合せ(イ、ウ、エ、オ、カ、ケ):伝票1件ごと:どの部門の単位の要望も集計し直せますが、表2 の No.3 の行のとおり、取引先ごとより細かいデータは共有データに入れられません。取引先ごと:最も細かい要望の単位ですが、表2 の No.3 の行のとおり、個人事業主の取引が分かるので共有データに入れられません。
- c がIT部門と、部門ごとに別版を作ることを話す・経理部と、自部門のデータで集計を続けると話すの組合せ(イ、エ、オ、カ、キ、ケ):別版を作る案:表2 の No.1 の行に『部門ごとの別版は作らない』とあり、営業部だけに取引先ごとのデータを出す別版は作れません。経理部と話す案:仕入単価は出せませんが、表1 の経理部の『ほしい理由』は利益を出すことで、表2 の No.2 の行の原価金額で満たせます。共有データで目的を満たせないのは、営業部の要望です。
覚えておくこと
- 要望と制約を、項目・単位ごとに表で照らす。満たせない要望が残ったら、制約の理由を確かめ、変えられない制約なら、認められた代わりの方法を、要望を出した部門と話す。この事例では、その相手は営業部である。
- 要望の目的が同じなら、出せない項目は、出してよい別の項目で満たせることがある。この事例では、仕入単価は出せないが、原価金額で経理部の目的は満たせる。
- 満たせない要望かどうかは、要望を出した部門ごとに、理由と照らして見る。この事例では、経理部の仕入単価は原価金額で目的を満たせ、残るのは営業部の取引先ごとだけで、これは自部門のデータでの集計で満たす。
(科目B・3-2)