科目B|B2 データ活用による意思決定・検証と改善
離脱要因と対応案の優先順位
シラバス案 Ver.0.1(2026年8月31日公表)の『B 2-3 データ分析結果に基づく洞察の導出,意思決定への反映』
教育業のA社は、社会人向けの動画講座を、インターネットで提供している。最近、X部長は、受講を途中でやめる人が多いと感じるようになった。そこでYさんに、受講状況のデータを集計し、離脱を減らすための対応案の優先順位を整理するよう頼んだ。
ここでの離脱とは、受講を始めてから4週間のうちに、受講をやめて戻らなくなることである。Yさんは、いまの講座の受講者1,000人について、ログインの回数別に離脱の状況を集計した。結果を表1 に示す。
次に、Yさんは、離脱を減らすための対応案を4つ出し、内容と見込みを表2 にまとめた。A社では、対応案の優先順位を、表3 のきまりで決めることになっている。
Yさんの整理は次のとおりである。表1 から言えるのは、【a】ということである。表3 のきまりで「すぐに着手する」に当たる対応案は、【b】である。同じきまりで「計画に入れて進める」に当たる対応案は、【c】である。
表1 ログインの回数別の離脱の状況(受講開始から4週間)
| ログインの回数(週あたり) | 受講者数 | 離脱者数 | 離脱率 |
|---|---|---|---|
| 週3回以上 | 400 | 20 | 5.0% |
| 週1〜2回 | 500 | 80 | 16.0% |
| 週1回未満 | 100 | 45 | 45.0% |
| 合計 | 1,000 | 145 | 14.5% |
ログインの回数は、各受講者の週あたりの平均である。表1 は、受講者が自分で受講の仕方を決めた実績の集計である。
表2 離脱を減らす対応案
| 対応案 | 内容 | 離脱の減少の見込み | 手間 | 実施の期限 |
|---|---|---|---|---|
| 受講者への声かけ | 週1回未満の受講者に、講師が個別にメッセージを送る | 18人 | 中 | 今月中 |
| 学習機能の追加 | 動画の再生速度の変更と、学習記録の機能を加える | 30人 | 大 | 期限なし |
| 週次メールの改善 | 毎週のお知らせメールに、残りの課題の数を載せる | 8人 | 小 | 今月中 |
| 掲示板の整備 | 受講者どうしが質問できる掲示板を整える | 4人 | 中 | 期限なし |
実施の期限が今月中の案は、いまの講座の受講者に間に合わせる必要がある案である。
表3 対応案の優先づけのきまり
| No. | 重要度 | 緊急度 | 扱い |
|---|---|---|---|
| 1 | 高 | 高 | すぐに着手する |
| 2 | 高 | 低 | 計画に入れて進める |
| 3 | 低 | 高 | 簡単な改善にとどめる |
| 4 | 低 | 低 | 当面は見送る |
この事例では、重要度は、表2 の『離脱の減少の見込み』が15人以上のときに高とする。緊急度は、表2 の『実施の期限』が今月中のときに高とする。手間は、この表の区分には使わない。
設問
本文中の【a】〜【c】に入れる字句の組合せとして、最も適切なものを解答群の中から選べ。
- 表1 から言えるのは、【a】ということである。
- 表3 のきまりで「すぐに着手する」に当たる対応案は、【b】である。
- 同じきまりで「計画に入れて進める」に当たる対応案は、【c】である。
| 記号 | 【a】 | 【b】 | 【c】 |
|---|---|---|---|
| ア | ログインの少なさが、離脱の原因である | 受講者への声かけ | 学習機能の追加 |
| イ | 週1回未満の受講者の離脱者数が最も多い | 学習機能の追加 | 掲示板の整備 |
| ウ | ログインの少なさが、離脱の原因である | 週次メールの改善 | 掲示板の整備 |
| エ | ログインの回数が少ないほど、離脱率が高い | 受講者への声かけ | 学習機能の追加 |
| オ | 週1回未満の受講者の離脱者数が最も多い | 学習機能の追加 | 週次メールの改善 |
| カ | ログインの回数が少ないほど、離脱率が高い | 受講者への声かけ | 週次メールの改善 |
| キ | ログインの少なさが、離脱の原因である | 学習機能の追加 | 週次メールの改善 |
| ク | ログインの回数が少ないほど、離脱率が高い | 週次メールの改善 | 学習機能の追加 |
| ケ | 週1回未満の受講者の離脱者数が最も多い | 週次メールの改善 | 掲示板の整備 |
正解:エ a:ログインの回数が少ないほど、離脱率が高い b:受講者への声かけ c:学習機能の追加
ポイント
シラバス案(Ver.0.1)にある項目です。問われるとしたら、集計表から言えることと言えないことを分け、決めた基準(重要度と緊急度)を表の値に当てて、対応案の優先順位を決める力です。
考え方と解き方
表1 は、何が言えるかを決める表です。率の列と人数の列は、見る目的がちがい、注の条件も読みます。表2 と表3 は、案ごとの値を、表3 のきまりに当てはめて読みます。取りちがえやすいのは、見込みの大きさだけ、期限だけ、手間の小ささだけで選んでしまうところです。
- 表1 の『離脱率』の列を見ると、週3回以上は5.0%、週1〜2回は16.0%、週1回未満は45.0%で、ログインの回数が少ないほど高くなっています。『離脱者数』の列で最も多いのは、週1〜2回の80人で、週1回未満は45人です。ただし、表1 の注より、表1 は受講者が自分で受講の仕方を決めた実績の集計です。意欲など別の要因が、ログインの少なさと離脱の両方に効いているかもしれず、ログインの少なさが離脱の原因とは言えません。したがって a は、ログインの回数が少ないほど、離脱率が高い、です。
- 表3 の No.1 の行は、重要度も緊急度も高い案で、『すぐに着手する』です。表3 の注より、重要度は表2 の『離脱の減少の見込み』の列が15人以上、緊急度は『実施の期限』の列が今月中のときに高です。表2 で15人以上なのは、受講者への声かけ(18人)と学習機能の追加(30人)で、このうち期限が今月中なのは受講者への声かけです。週次メールの改善は期限が今月中ですが、見込みが8人で重要度が低く、手間の小ささは、このきまりの区分には使いません。したがって b は、受講者への声かけです。
- 表3 の No.2 の行は、重要度が高く緊急度が低い案で、『計画に入れて進める』です。表2 で見込みが15人以上の2案のうち、『実施の期限』の列が期限なしなのは学習機能の追加です。掲示板の整備も期限なしですが、見込みが4人で重要度が低い案です。したがって c は学習機能の追加です。以上から、a はログインの回数が少ないほど離脱率が高い、b は受講者への声かけ、c は学習機能の追加で、エ です。
ほかの選択肢
- a がログインの少なさが、離脱の原因である・週1回未満の受講者の離脱者数が最も多いの組合せ(ア、イ、ウ、オ、キ、ケ):原因を言う文:表1 の注のとおり、受講者が自分で受講の仕方を決めた実績の集計です。意欲など別の要因が両方に効いているかもしれず、ログインの少なさが原因とは決められません。離脱者数を言う文:率が最も高いのは週1回未満の45.0%ですが、『離脱者数』の列で最も多いのは、週1〜2回の80人です。
- b が学習機能の追加・週次メールの改善の組合せ(イ、ウ、オ、キ、ク、ケ):学習機能の追加:見込みは30人で重要度は高いのですが、実施の期限が期限なしで緊急度が低く、表3 では No.2 の『計画に入れて進める』です。週次メールの改善:実施の期限は今月中で緊急度は高く、手間も小さいのですが、見込みが8人で重要度が低く、表3 では No.3 です。手間は区分に使いません。
- c が週次メールの改善・掲示板の整備の組合せ(イ、ウ、オ、カ、キ、ケ):週次メールの改善:実施の期限が今月中で緊急度が高い点は目立ちますが、見込みが8人で重要度が低く、表3 では No.3 の『簡単な改善にとどめる』です。重要度が高い案ではないので、計画には入れません。掲示板の整備:実施の期限が期限なしで緊急度が低い点は合いますが、見込みが4人で重要度が低く、表3 では No.4 の『当面は見送る』です。
覚えておくこと
- 集計の差だけでは、原因とは言えない。集計が、だれがどう決めた実績なのかを確かめる。この事例では、受講者が自分で受講の仕方を決めた実績なので、意欲など別の要因が、ログインの少なさと離脱の両方に効いているかもしれない。
- 分析結果から言えることは、使った列に合わせて言う。この事例の表1 でも、離脱率が最も高い区分と、離脱者数が最も多い区分は別なので、言いたい内容に合う列で確かめる。
- 優先順位は、決めた基準を、案ごとの表の値に当てて決める。この事例では、重要度と緊急度の両方が高い案を先に着手し、重要度だけが高い案は計画に入れ、手間の小ささは基準に使わない。
(科目B・2-3)