科目B|B4 データ活用の向上
試行(PoC)の目的と成功条件
シラバス案 Ver.0.1(2026年8月31日公表)の『B 4-2 PoC の企画及び実施』
ホテル業のA社は、客室の需要をAIで予測し、空室や売り逃しを減らしたいと考えている。X部長は、本格導入の前に、試行(PoC)を3か月で行うよう指示した。Yさんは、PoC の企画案を作った。
A社には、PoC の企画の基準がある。基準を表1 に、Yさんの企画案を表2 に示す。X部長は、企画案を基準に照らして確かめるよう、Zさんに頼んだ。
企画案が使うデータの状況を表3 に示す。評価は、過去の期間の予約実績に対して、予測と実績を比べて行う。
Zさんの確かめの結果は次のとおりである。表2 の企画案のうち、検証の目的、仮説の内容、成功の条件の中で、表1 の基準に合っていないのは【a】である。『使うデータ』のうち、基準では PoC の開始までに用意できず、見直す必要があるのは【b】である。評価に使う期間は基準に合っておらず、直すなら【c】にする。
表1 A社のPoC企画の基準
| No. | 項目 | 基準 |
|---|---|---|
| 1 | 検証の目的 | 本格導入を判断するための問いを1つに絞り、PoC の期間内に測れる形で書く。 |
| 2 | 仮説の内容 | 現行の方法と比べる形で、PoC で測る指標を入れて書く。 |
| 3 | 成功の条件 | 検証の前に、現行の実績より良い水準を、数で決める。 |
| 4 | 使うデータ | PoC の開始までの1か月で用意できる物に限る。 |
| 5 | 評価の期間 | 学習に使っていない期間とし、繁忙期と閑散期の両方を含める。繁忙期は7月〜8月と年末年始、閑散期は6月と2月とする。 |
表2 Yさんの企画案
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 検証の目的 | AIを使った宿泊数の予測が、現行の予測より当たるかを、3か月のPoC で確かめる。 |
| 仮説の内容 | AIを使った予測は、現行の予測より、宿泊数の誤差率が小さい。 |
| 成功の条件 | 評価で出す予測の誤差率が、15%以下になること。 |
| 使うデータ | 予約実績、天候情報、行事情報 |
| 学習に使う期間 | 2023年4月〜2025年3月 |
| 評価に使う期間 | 2024年4月〜2025年3月 |
現行の予測方法の誤差率は、直近1年の宿泊数の予測で14%である。
表3 使うデータの状況
| データ | 現在の状況 | 用意にかかる期間 |
|---|---|---|
| 予約実績 | 2023年4月〜2026年3月の分を保有。形式をそろえる作業が要る。 | 3週間 |
| 天候情報 | 外部の提供元から購入する。 | 1週間 |
| 行事情報 | 記録がなく、集める仕組みから作る。 | 4か月 |
設問
本文中の【a】〜【c】に入れる字句の組合せとして、最も適切なものを解答群の中から選べ。
- 表2 の企画案のうち、検証の目的、仮説の内容、成功の条件の中で、表1 の基準に合っていないのは【a】である。
- 『使うデータ』のうち、基準では PoC の開始までに用意できず、見直す必要があるのは【b】である。
- 評価に使う期間は基準に合っておらず、直すなら【c】にする。
| 記号 | 【a】 | 【b】 | 【c】 |
|---|---|---|---|
| ア | 仮説の内容 | 天候情報 | 2025年7月〜9月 |
| イ | 検証の目的 | 行事情報 | 2025年6月〜8月 |
| ウ | 検証の目的 | 予約実績 | 2024年6月〜8月 |
| エ | 成功の条件 | 予約実績 | 2025年6月〜8月 |
| オ | 成功の条件 | 行事情報 | 2025年6月〜8月 |
| カ | 仮説の内容 | 予約実績 | 2025年7月〜9月 |
| キ | 検証の目的 | 天候情報 | 2025年7月〜9月 |
| ク | 成功の条件 | 行事情報 | 2024年6月〜8月 |
| ケ | 仮説の内容 | 天候情報 | 2024年6月〜8月 |
正解:オ a:成功の条件 b:行事情報 c:2025年6月〜8月
ポイント
シラバス案(Ver.0.1)にある項目です。問われるとしたら、PoC の企画案を基準と状況の表に照らして、検証の条件、使うデータ、評価の期間の不適切な所を見つける力です。
考え方と解き方
基準(表1)を物差しにして、企画案(表2)の項目を1つずつ照らします。成功条件は表2 の注の現行の値と、使うデータは表3 と、評価の期間は表2 の学習の期間と表3 の保有の期間と、あわせて見ます。
- 表1 の No.3 の行より、成功の条件は現行の実績より良い水準にします。表2 の注より、現行の誤差率は14%です。表2 の『成功の条件』の行は15%以下で、現行より悪い値でも成功になり、基準に合いません。検証の目的は、表1 の No.1 のとおり、現行の予測と比べる問いを3か月で測れる形で書いてあります。仮説も、表1 の No.2 のとおり、現行の予測と比べる形で誤差率を入れてあります。したがって a は成功の条件です。
- 表1 の No.4 の行より、使うデータは開始までの1か月で用意できる物に限ります。表3 の『用意にかかる期間』の列は、予約実績が3週間、天候情報が1週間、行事情報が4か月です。1か月を超えるのは行事情報だけです。予約実績は形式をそろえる作業が要りますが3週間で間に合い、天候情報は外部から購入しても1週間で間に合います。したがって b は行事情報です。
- 表1 の No.5 の行より、評価の期間は、学習に使っていない期間で、繁忙期と閑散期の両方を含めます。表2 の『学習に使う期間』は2023年4月〜2025年3月で、『評価に使う期間』の2024年4月〜2025年3月は学習の期間と重なります。表3 の予約実績は2026年3月分まであるので、学習のあとの2025年4月以降を使えます。表1 の No.5 の行より、繁忙期は7月〜8月、閑散期は6月なので、両方を含むのは2025年6月〜8月です。2025年7月〜9月には閑散期が入りません。したがって c は2025年6月〜8月です。a は成功の条件、b は行事情報、c は2025年6月〜8月で、オ です。
ほかの選択肢
- a が検証の目的・仮説の内容の組合せ(ア、イ、ウ、カ、キ、ケ):検証の目的は、現行の予測と比べる問いを、3か月で測れる形で書いてあり、表1 の No.1 に合っています。仮説も、現行の予測と比べる形で、誤差率という指標が入っていて、表1 の No.2 に合っています。
- b が予約実績・天候情報の組合せ(ア、ウ、エ、カ、キ、ケ):予約実績は形式をそろえる作業が要りますが、用意に3週間で、1か月以内です。天候情報は外部から購入しますが、用意に1週間で、1か月以内です。どちらも、準備の手間の大きさではなく、用意にかかる期間で見ると、基準に合います。
- c が2024年6月〜8月・2025年7月〜9月の組合せ(ア、ウ、カ、キ、ク、ケ):2024年6月〜8月は、繁忙期と閑散期を含みますが、学習に使う2023年4月〜2025年3月の中で、学習に使っていない期間ではありません。2025年7月〜9月は、学習のあとの期間ですが、閑散期の6月を含みません。
覚えておくこと
- 成功条件は、検証の前に、測る指標と水準を数で決める。水準が現行の実績と同じか悪いと、改善がなくても成功になる。この事例では、現行の誤差率14%より良い水準とするのが基準で、15%以下は合わない。
- PoC で使うデータは、開始までに用意できるかを、データごとの準備や手続きにかかる期間で確かめる。この事例では、表3 の『用意にかかる期間』で、開始までの1か月に収まる物に限る。
- 予測の評価は、学習に使っていない期間のデータで行い、季節による差が出る期間を含めて確かめる。この事例では、繁忙期と閑散期の両方を含めるのが基準で、学習は2023年4月〜2025年3月なので、評価はそのあとの期間から選ぶ。
(科目B・4-2)