科目B|B4 データ活用の向上
新しい技術の動向と使いどころ
シラバス案 Ver.0.1(2026年8月31日公表)の『B 4-1 データ活用技術及びデジタル技術(AI を含む)に関する各種動向の把握』
電力業のA社は、送電設備の鉄塔や電柱などを、点検員が目で見て点検している。点検のたびに、設備の写真も撮っている。X部長は、写真に写った設備の良・不良を画像認識のAIで見分ける技術を、試せないかと考えた。そこでYさんに、試行(PoC)に向くユースケースを選ぶよう頼んだ。
A社は、PoC に選ぶユースケースの条件を決めた。条件を表1 に、Yさんが挙げたユースケース候補を表2 に示す。
Yさんは、画像認識を使った他社や他の分野の事例も集めた。集めた事例を表3 に示す。
Zさんが、表1 から表3 を確かめた結果は次のとおりである。表2 の候補のうち、表1 の条件をすべて満たし、PoC に選ぶのは【a】である。表2 の候補のうち、写真に判定を付ける作業を足せば、表1 の条件をすべて満たすようになるのは【b】である。表3 の事例のうち、A社の PoC で出る正解率の目安にできるのは【c】である。
表1 A社がPoC に選ぶユースケースの条件
| No. | 項目 | 条件 |
|---|---|---|
| 1 | データの量 | 点検の写真が2,000枚以上ある。 |
| 2 | 正解の付けやすさ | 写真のうち、過去の点検記録で良・不良の判定が付いている物が80%以上ある。 |
| 3 | 期待効果 | 画像認識で、年間の点検時間を300時間以上減らせる見込みがある。 |
3つの条件をすべて満たすユースケースを、PoC に選ぶ。
表2 Yさんが挙げたユースケース候補
| ユースケース | 写真の枚数 | 判定が付いた割合 | 年間の削減見込み(時間) |
|---|---|---|---|
| 鉄塔のさび | 2,600 | 85% | 320 |
| がいしの割れ | 1,200 | 95% | 410 |
| 電線への樹木の接近 | 3,900 | 88% | 150 |
| 変圧器の油漏れ | 2,300 | 78% | 350 |
| 電柱の傾き | 6,800 | 35% | 260 |
| 計器の読み取り | 5,000 | 60% | 200 |
写真の枚数と判定が付いた割合は、過去の点検の記録から数えた。削減見込みは、点検員の作業時間から見積もった。写真に判定を付ける作業を足しても、削減見込みは変わらない。
表3 集めた画像認識の事例
| 事例 | 撮り方 | 正解率 | 評価に使った写真 |
|---|---|---|---|
| 事例甲 | ドローンで上空から撮影 | 98% | 学習に使っていない写真だけ |
| 事例乙 | 地上から望遠カメラで撮影 | 91% | 学習に使っていない写真だけ |
| 事例丙 | 地上から望遠カメラで撮影 | 94% | 学習に使った写真を一部含む |
A社の点検の撮影は、地上から望遠カメラで行う。撮り方が違うと写り方が変わり、正解率は同じ目安にならない。A社の PoC では、学習に使っていない写真で正解率を出す。
設問
本文中の【a】〜【c】に入れる字句の組合せとして、最も適切なものを解答群の中から選べ。
- 表2 の候補のうち、表1 の条件をすべて満たし、PoC に選ぶのは【a】である。
- 表2 の候補のうち、写真に判定を付ける作業を足せば、表1 の条件をすべて満たすようになるのは【b】である。
- 表3 の事例のうち、A社の PoC で出る正解率の目安にできるのは【c】である。
| 記号 | 【a】 | 【b】 | 【c】 |
|---|---|---|---|
| ア | がいしの割れ | 電柱の傾き | 事例丙 |
| イ | 電線への樹木の接近 | 電柱の傾き | 事例丙 |
| ウ | 鉄塔のさび | 電柱の傾き | 事例乙 |
| エ | がいしの割れ | 変圧器の油漏れ | 事例乙 |
| オ | 電線への樹木の接近 | 計器の読み取り | 事例甲 |
| カ | 鉄塔のさび | 変圧器の油漏れ | 事例甲 |
| キ | がいしの割れ | 計器の読み取り | 事例甲 |
| ク | 電線への樹木の接近 | 計器の読み取り | 事例丙 |
| ケ | 鉄塔のさび | 変圧器の油漏れ | 事例乙 |
正解:ケ a:鉄塔のさび b:変圧器の油漏れ c:事例乙
ポイント
シラバス案(Ver.0.1)にある項目です。問われるとしたら、新しい技術を試すユースケースを条件の表で選ぶ力と、集めた事例の数字を、自社の条件に当てはまるかを見て読む力です。
考え方と解き方
a と b は、表1 の条件で表2 の候補を見ますが、見る点が違います。c は表3 の事例を、A社の撮り方と評価の仕方に照らして読みます。正解率の高さでは決まりません。
- 表1 の No.1〜3 の行より、写真が2,000枚以上、判定が付いた割合が80%以上、年間の削減見込みが300時間以上の、3つをすべて満たす候補を探します。表2 で3つとも満たすのは、鉄塔のさび(2,600枚、85%、320時間)だけです。がいしの割れは、判定が付いた割合が95%ですが、写真が1,200枚で足りません。電線への樹木の接近は、削減見込みが150時間で足りません。したがって a は鉄塔のさびです。
- 表2 の注より、判定を付ける作業を足しても、削減見込みは変わりません。判定を付ける作業で変えられるのは、『判定が付いた割合』の列だけです。表2 で、その列だけが条件に届かない候補は、変圧器の油漏れ(78%。写真2,300枚、削減見込み350時間は条件を満たす)です。電柱の傾きは、判定が付いた割合が35%で、削減見込みも260時間で足りず、判定を付けても条件を満たしません。計器の読み取りは、判定が付いた割合が60%で、削減見込みも200時間で足りません。したがって b は変圧器の油漏れです。
- 表3 の注より、A社の撮影は地上から望遠カメラで、撮り方が違う事例の正解率は同じ目安にならず、A社の PoC では学習に使っていない写真で正解率を出します。『撮り方』の列で地上から望遠カメラなのは事例乙と事例丙です。『評価に使った写真』の列で、学習に使っていない写真だけなのは事例乙で、事例丙は学習に使った写真を一部含みます。事例甲は正解率が98%と最も高いのですが、撮り方がドローンで違います。したがって c は事例乙です。a は鉄塔のさび、b は変圧器の油漏れ、c は事例乙で、ケ です。
ほかの選択肢
- a ががいしの割れ・電線への樹木の接近の組合せ(ア、イ、エ、オ、キ、ク):がいしの割れは、判定が付いた割合は足りますが、写真が1,200枚で、表1 の No.1 の2,000枚に届きません。電線への樹木の接近は、写真と判定は足りますが、削減見込みが150時間で、表1 の No.3 の300時間に届きません。
- b が電柱の傾き・計器の読み取りの組合せ(ア、イ、ウ、オ、キ、ク):どちらも判定が付いた割合が低い候補ですが、削減見込みも条件に届きません(電柱の傾きは260時間、計器の読み取りは200時間)。判定を付ける作業を足しても削減見込みは変わらないので、条件をすべて満たすようになりません。
- c が事例甲・事例丙の組合せ(ア、イ、オ、カ、キ、ク):事例甲は、撮り方がドローンで、A社の地上から望遠カメラとは違い、正解率が高くても同じ目安になりません。事例丙は、撮り方は同じですが、学習に使った写真を一部含んで評価していて、A社の PoC の評価の仕方と違います。
覚えておくこと
- PoC に選ぶユースケースは、データの量、正解の付けやすさ、期待効果を、決めた条件の全部で確かめる。この事例では、1つでも満たさない候補は、ほかの点が良くても選ばない。写真2,000枚以上、判定が付いた割合80%以上、削減見込み年300時間以上の3つが条件である。
- 条件に届かない候補は、何を足せば届くかを見る。この事例では、判定を付ける作業で変えられるのは判定が付いた割合だけで、枚数や削減見込みは変わらない。
- 集めた事例の正解率は、撮り方と評価の仕方が自社の PoC と近いかを見てから、目安に使う。この事例では、A社と同じ撮り方で、学習に使っていない写真だけで評価した事例だけが目安になる。
(科目B・4-1)