科目B|B2 データ活用による意思決定・検証と改善
仮説に合うデータの選定
シラバス案 Ver.0.1(2026年8月31日公表)の『B 2-1 データ活用の目的に沿うデータの特定と選定』
飲食業のA社は、駅前と郊外に合わせて30店を持つ飲食チェーンである。X部長は、今年の8〜10月に、郊外の店で来店客数が減ったことに気づいた。そこでYさんに、原因の仮説を立て、確かめるためのデータを選ぶよう頼んだ。
8〜10月の来店客数を、前年と比べた結果を表1 に示す。駅前の店はほとんど変わらず、郊外の店で大きく減っている。
Yさんは、郊外の店について、仮説を3つ立てた。仮説ごとの切り口と、比べる期間を表2 に示す。いまは11月で、結果の報告は2週間後の会議である。
A社で使えるデータの候補を表3 に示す。Yさんは、この候補から、仮説ごとに使うデータを選ぶ。
Yさんの整理は次のとおりである。仮説1 を確かめるために使う社内のデータは、【a】である。仮説2 を確かめるために使う外部のデータは、【b】である。仮説3 では、人流データと来店客数を比べるために、来店客数を【c】集計する。
表1 来店客数の前年との比較(8〜10月の合計)
| 区分 | 店舗数 | 前年(千人) | 今年(千人) | 前年比 |
|---|---|---|---|---|
| 駅前 | 12 | 300 | 297 | 99.0% |
| 郊外 | 18 | 360 | 306 | 85.0% |
| 合計 | 30 | 660 | 603 | 91.4% |
来店客数は、店舗ごと・1時間ごとに記録している。
表2 仮説と、確かめ方の条件
| No. | 仮説(郊外の店) | 切り口 | 比べる期間 |
|---|---|---|---|
| 1 | 平日の昼に来店する客が減った | 時間帯別 | 前年と今年の8〜10月 |
| 2 | 雨の日が増えて、来店が減った | 日ごと | 前年と今年の8〜10月 |
| 3 | 店の周辺の人通りが減った | 週ごと | 前年と今年の8〜10月 |
切り口は、仮説を確かめるために分けて見る単位である。前年の8月から今年の10月までのデータが要る。
表3 使えるデータの候補
| データ | 粒度 | 期間 | 対象 | 入手 |
|---|---|---|---|---|
| レジ売上データ(社内) | 店舗ごと・1時間ごと | 過去3年 | 来店した全員 | 社内で即日 |
| レジ売上の日次まとめ(社内) | 店舗ごと・1日ごと | 過去3年 | 来店した全員 | 社内で即日 |
| 入店センサーの記録(社内) | 店舗ごと・1時間ごと | 過去1年 | 来店した全員 | 社内で即日 |
| 気象の観測データ(外部) | 市区町村ごと・1日ごと | 過去10年 | ― | 公開、即日 |
| 降水量の記録(外部) | 市区町村ごと・1週間ごと | 過去10年 | ― | 公開、即日 |
| 雨雲の観測データ(外部) | 市区町村ごと・1時間ごと | 過去3年 | ― | 契約が必要、約1か月 |
| 人流データ(外部) | 店の周辺ごと・1週間ごと | 過去2年 | 周辺を通る人 | 購入が必要、約1週間 |
『1時間ごと』『1日ごと』は、日付つきで、その単位に分かれていることを表す。『期間』は、いまから過去にさかのぼって使える長さである。『入手』は、使える状態になるまでの日数の目安である。
設問
本文中の【a】〜【c】に入れる字句の組合せとして、最も適切なものを解答群の中から選べ。
- 仮説1 を確かめるために使う社内のデータは、【a】である。
- 仮説2 を確かめるために使う外部のデータは、【b】である。
- 仮説3 では、人流データと来店客数を比べるために、来店客数を【c】集計する。
| 記号 | 【a】 | 【b】 | 【c】 |
|---|---|---|---|
| ア | レジ売上の日次まとめ | 雨雲の観測データ | 1時間ごとに |
| イ | レジ売上データ | 降水量の記録 | 1週間ごとに |
| ウ | 入店センサーの記録 | 雨雲の観測データ | 1日ごとに |
| エ | レジ売上の日次まとめ | 気象の観測データ | 1週間ごとに |
| オ | 入店センサーの記録 | 降水量の記録 | 1時間ごとに |
| カ | レジ売上データ | 気象の観測データ | 1週間ごとに |
| キ | レジ売上の日次まとめ | 降水量の記録 | 1日ごとに |
| ク | レジ売上データ | 気象の観測データ | 1日ごとに |
| ケ | 入店センサーの記録 | 雨雲の観測データ | 1時間ごとに |
正解:カ a:レジ売上データ b:気象の観測データ c:1週間ごとに
ポイント
シラバス案(Ver.0.1)にある項目です。問われるとしたら、仮説の切り口と期間に合うデータを候補の一覧から選ぶ力と、粒度のちがうデータを比べるときの合わせ方です。
考え方と解き方
まず表2 で、仮説ごとの切り口と比べる期間を確かめ、表3 の『粒度』『期間』『対象』『入手』の列と照らします。データの名前が仮説に合って見えても、粒度が粗い、期間が足りない、報告に間に合わない、のどれかで使えない場合があります。
- 表2 の No.1 の行は、切り口が時間帯別で、前年の8月からのデータが要ります。表3 の社内のデータのうち、『粒度』が1時間ごとなのは、レジ売上データと入店センサーの記録です。このうち『期間』が前年の8月に届くのは、レジ売上データ(過去3年)で、入店センサーの記録は過去1年で届きません。レジ売上の日次まとめは、期間は届きますが、『粒度』が1日ごとで、時間帯別に分けられません。したがって a はレジ売上データです。
- 表2 の No.2 の行は、切り口が日ごとで、報告は2週間後です。表3 の外部のデータのうち、『粒度』が1日ごとか、それより細かいのは、気象の観測データ(1日ごと)と雨雲の観測データ(1時間ごと)です。雨雲の観測データは、『入手』が契約が必要で約1か月かかり、2週間後の報告に間に合いません。降水量の記録は、『粒度』が1週間ごとで、日ごとに分けられません。したがって b は気象の観測データです。
- 表2 の No.3 の行の切り口は週ごとで、表3 の人流データの『粒度』は1週間ごとです。表1 の注より、来店客数は1時間ごとに記録しているので、人流データより細かいデータです。細かいほうを、人流データの粒度の1週間ごとに集計すれば、同じ単位で比べられ、切り口の週ごとにも合います。したがって、a はレジ売上データ、b は気象の観測データ、c は1週間ごとにで、カ です。
ほかの選択肢
- a がレジ売上の日次まとめ・入店センサーの記録の組合せ(ア、ウ、エ、オ、キ、ケ):レジ売上の日次まとめは、表3 の『粒度』が1日ごとで、時間帯別に分けられません。入店センサーの記録は、『粒度』は1時間ごとで『対象』も来店した全員ですが、『期間』が過去1年で、前年の8月に届きません。
- b が降水量の記録・雨雲の観測データの組合せ(ア、イ、ウ、オ、キ、ケ):降水量の記録は、表3 の『粒度』が1週間ごとで、日ごとの切り口に分けられません。雨雲の観測データは、『粒度』も『期間』(過去3年)も合いますが、『入手』が約1か月かかり、2週間後の報告に間に合いません。
- c が1日ごとに・1時間ごとにの組合せ(ア、ウ、オ、キ、ク、ケ):人流データは、表3 の『粒度』が1週間ごとです。来店客数を1日ごとや1時間ごとに集計しても、人流データの1週間の値と単位がそろいません。人流データを日ごとや1時間ごとに割り振ると、元のデータにない差を作ることになります。
覚えておくこと
- 仮説を確かめるデータは、名前だけで選ばず、表の『粒度』『期間』『対象』『入手』を、仮説の切り口・比べる期間・報告の日と照らして選ぶ。この事例では、時間帯別の仮説には、1時間ごとで、前年の8月に届くデータを選ぶ。
- 切り口より粗い粒度のデータでは、その切り口で分けて確かめられない。この事例では、1週間ごとのデータでは、日ごとの差が見えない。
- 粒度のちがうデータを比べるときは、細かいほうを集計して粗いほうに合わせる。粗いほうを均等に割って細かくしても、元のデータにない差は出てこない。ただし、その粒度が仮説の切り口より粗いと、切り口で分けて確かめられない。
(科目B・2-1)