科目B|B1 データの適切な取扱い
機密区分と共有できる範囲
シラバス案 Ver.0.1(2026年8月31日公表)の『B 1-3 利用目的,アクセス範囲,機密レベル,ルール及び倫理に基づく適切な取扱い』
A病院の研究チームは、診療で得たデータを使って研究を進めている。研究では、院内の他部署や、外部の共同研究先とデータを共有することがある。X部長は、Yさんに、渡したいデータごとに、渡す前の扱い(承認の要否と承認者)を確かめるよう頼んだ。
A病院には、データの機密区分ごとに、研究のために渡す時の承認を定めたきまりがある。渡す先は、院内の他部署と、外部の共同研究先の2つである。きまりを表1 に示す。
A病院のデータ項目と、その機密区分を表2 に示す。表2 の No.7 は新しく集めるデータで、区分はまだ決まっていない。Yさんは、研究チームから出た2つの提供の依頼を、表3 にまとめた。必要な本人の同意は、どの依頼でも先に取れているものとする。
Yさんの整理は次のとおりである。表3 の依頼 No.1 の扱いは【a】である。依頼 No.2 の扱いは【b】である。表1 の『内容の目安』に当てはめると、表2 の No.7 の項目の区分は【c】になる。
設問
本文中の【a】〜【c】に入れる字句の組合せとして、最も適切なものを解答群の中から選べ。
- 表3 の依頼 No.1 の扱いは【a】である。
- 依頼 No.2 の扱いは【b】である。
- 表1 の『内容の目安』に当てはめると、表2 の No.7 の項目の区分は【c】になる。
| 記号 | 【a】 | 【b】 | 【c】 |
|---|---|---|---|
| ア | 院長承認 | 科長承認 | 院内 |
| イ | 院長承認 | 科長承認 | 限定 |
| ウ | 院長承認 | 審査許可 | 限定 |
| エ | 承認不要 | 院長承認 | 秘匿 |
| オ | 承認不要 | 審査許可 | 院内 |
| カ | 承認不要 | 審査許可 | 秘匿 |
| キ | 審査許可 | 科長承認 | 限定 |
| ク | 審査許可 | 院長承認 | 院内 |
| ケ | 審査許可 | 院長承認 | 秘匿 |
正解:イ a:院長承認 b:科長承認 c:限定
ポイント
シラバス案(Ver.0.1)にある項目です。問われるとしたら、データの機密区分と提供先から、渡す前の扱いを表で照らして決める力と、新しいデータの区分を、区分の目安に当てはめて決める力です。
考え方と解き方
項目の区分は、項目の名前の印象ではなく、表2 の『区分』の列で決まります。区分が決まっても、表1 は提供先ごとに列が分かれているので、どちらの列を読むかで取りちがえやすいところです。新しい項目は、表1 の『内容の目安』と照らします。
- 表3 の依頼 No.1 の項目は診療科別の入院患者数で、提供先は共同研究先です。表2 の No.2 の行の『区分』は『院内』です。表1 の『院内』の行の『共同研究先へ』の列を見ると、院長承認です。したがって a は院長承認です。
- 表3 の依頼 No.2 の項目は医師別の手術件数で、提供先は院内の他部署です。表2 の No.3 の行の『区分』は『限定』です。表1 の『限定』の行の『院内の他部署へ』の列を見ると、科長承認です(『共同研究先へ』の列は院長承認で、この依頼の列ではありません)。したがって b は科長承認です。
- 表2 の No.7 の項目は、職員ごとの超過勤務の時間です。表1 の『内容の目安』の列を見ると、『職員個人や診療科の運営に関する情報』が『限定』の行にあります。『院内』は患者を特定できない集計、『秘匿』は患者を特定できる情報で、職員別の時間はどちらにも当たりません。したがって c は限定で、イ です。
ほかの選択肢
- a が承認不要・審査許可の組合せ(エ、オ、カ、キ、ク、ケ):承認不要は、『公開』の行や、『院内』の行の『院内の他部署へ』の列の値です。依頼 No.1 の項目は表2 で『院内』ですが、提供先が共同研究先なので、『共同研究先へ』の列の院長承認になります。審査許可は、『秘匿』の行の値です。診療科別の入院患者数は患者を特定できない集計で、区分は『院内』です。名前に『患者』とあっても『秘匿』ではありません。
- b が院長承認・審査許可の組合せ(ウ、エ、オ、カ、ク、ケ):院長承認は、『院内』『限定』の行の『共同研究先へ』の列の値です。依頼 No.2 の提供先は院内の他部署なので、『院内の他部署へ』の列を読みます。審査許可は、『秘匿』の行の値です。医師別の手術件数は医師という個人の情報ですが、患者を特定できる情報ではないので、区分は『限定』で、『秘匿』ではありません。
- c が院内・秘匿の組合せ(ア、エ、オ、カ、ク、ケ):院内は、患者を特定できない集計の区分です。職員別の超過勤務時間は職員ごとの情報で、集計ではありません。秘匿は、患者を特定できる情報の区分です。超過勤務時間は職員の情報で、患者の情報ではありません。個人の情報だから『秘匿』、とは読みません。
覚えておくこと
- この事例では、承認は、項目の『区分』と『提供先』の2つで決まる。項目の名前ではなく表2 の区分を引き、表1 の提供先の列と交わる所を読む。新しい項目は、表1 の『内容の目安』に当てはめて区分を決める。
- この事例では、外部へ渡す条件は、院内の他部署へ渡す時と同じか重い。患者を特定できる情報は、院内の他部署へ渡す時も、研究のためには審査許可が要る。
- 患者を特定できる情報を外部の第三者に渡すには、原則として本人の同意が要る。人を対象とする医学系研究では、倫理審査委員会の意見を聴いたうえで、研究機関の長が許可する仕組みがある。この事例の『秘匿』は、この2つを前提にしている。職員個人の情報も、外部へ渡すには本人の同意が要る。
(科目B・1-3)