科目B|B2 データ活用による意思決定・検証と改善
目標と実績の差の検証
IPA が公表した試験の範囲の案(2026年8月31日)の「意思決定に基づく対応結果の検証と改善」に当たります。
通信業のA社は、個人向けの携帯回線を提供している。解約が増えたため、6月から、契約期間が3年以上の契約者に、特典を知らせる案内メールを月に1回送る施策を始めた。X部長は、施策を始めて5か月たったので、月ごとの解約率の目標と実績を比べ、差の要因と次の改善を整理するようYさんに頼んだ。
解約率は、その月の解約数を、月初の契約数で割った率である。月ごとの目標と実績を表1 に示す。差は、実績から目標を引いた値である。
Yさんは、月ごとの背景として、他社のキャンペーンと案内メールの送付の状況を表2 にまとめた。さらに、8月の解約の状況を契約期間別に集計し、施策を始める前の5月と並べた。結果を表3 に示す。
Yさんの整理は次のとおりである。8月の差の要因として、まず確かめるのは【a】である。10月の差の要因として、まず確かめるのは【b】である。表3 から、施策の中身として見直すのは【c】である。
表1 月ごとの解約率(目標と実績)
| 月 | 目標 | 実績 | 差(ポイント) |
|---|---|---|---|
| 5月 | ― | 2.5% | ― |
| 6月 | 2.4% | 2.3% | -0.1 |
| 7月 | 2.3% | 2.2% | -0.1 |
| 8月 | 2.2% | 2.5% | +0.3 |
| 9月 | 2.1% | 2.1% | 0.0 |
| 10月 | 2.0% | 2.3% | +0.3 |
5月は、施策を始める前の月である。目標は、6月から、月ごとに前の月より0.1ポイントずつ下げて決めた。
表2 月ごとの背景
| 月 | 他社のキャンペーン | 案内メールの送付(予定と実績) | 3年以上の解約率 | 3年未満の解約率 |
|---|---|---|---|---|
| 6月 | なし | 予定59,400件、実績59,400件 | 1.9% | 2.9% |
| 7月 | なし | 予定59,800件、実績59,800件 | 1.8% | 2.8% |
| 8月 | あり(乗り換え割引) | 予定60,000件、実績60,000件 | 1.7% | 3.7% |
| 9月 | なし | 予定60,300件、実績60,300件 | 1.7% | 2.7% |
| 10月 | あり(小規模) | 予定60,500件、実績24,000件 | 2.1% | 2.6% |
案内メールは、契約期間が3年以上の契約者に、月に1回送る。予定の件数は、その月の初めの3年以上の契約数である。『3年以上の解約率』は、案内メールを送る層だけ、『3年未満の解約率』は、案内メールを送らない層だけの解約率である。
表3 8月の契約期間別の解約の状況(5月との比較)
| 契約期間 | 契約数(8月初) | 解約数(8月) | 解約率(8月) | 解約率(5月) |
|---|---|---|---|---|
| 3年以上 | 60,000 | 1,020 | 1.7% | 2.0% |
| 1年以上3年未満 | 30,000 | 960 | 3.2% | 2.8% |
| 1年未満 | 10,000 | 520 | 5.2% | 4.5% |
| 合計 | 100,000 | 2,500 | 2.5% | 2.5% |
表1 の8月と5月の実績は、この表の合計の解約率と同じである。契約数は、5月も8月とほぼ同じである。
設問
本文中の【a】〜【c】に入れる字句の組合せとして、最も適切なものを解答群の中から選べ。
- 8月の差の要因として、まず確かめるのは【a】である。
- 10月の差の要因として、まず確かめるのは【b】である。
- 表3 から、施策の中身として見直すのは【c】である。
| 記号 | 【a】 | 【b】 | 【c】 |
|---|---|---|---|
| ア | 案内メールの送付の実績 | 月ごとの目標の下げ幅 | 案内を送る月ごとの回数 |
| イ | 月ごとの目標の下げ幅 | 他社のキャンペーンの影響 | 案内を送る月ごとの回数 |
| ウ | 他社のキャンペーンの影響 | 月ごとの目標の下げ幅 | 案内を送る契約期間の範囲 |
| エ | 案内メールの送付の実績 | 他社のキャンペーンの影響 | 案内の文面と特典の内容 |
| オ | 月ごとの目標の下げ幅 | 案内メールの送付の実績 | 案内を送る契約期間の範囲 |
| カ | 案内メールの送付の実績 | 月ごとの目標の下げ幅 | 案内の文面と特典の内容 |
| キ | 他社のキャンペーンの影響 | 案内メールの送付の実績 | 案内を送る月ごとの回数 |
| ク | 他社のキャンペーンの影響 | 案内メールの送付の実績 | 案内を送る契約期間の範囲 |
| ケ | 月ごとの目標の下げ幅 | 他社のキャンペーンの影響 | 案内の文面と特典の内容 |
正解:ク a:他社のキャンペーンの影響 b:案内メールの送付の実績 c:案内を送る契約期間の範囲
ポイント
この問題で試すのは、目標と実績の差が出た月の背景を表から読み、差の要因として確かめる点と、次の改善で見直す項目を選ぶ力です。
考え方と解き方
まず表1 で差が出た月を見つけ、表2 でその月の背景(他社の動き、施策の実施の状況、施策の対象の層の動き)を読み、表3 で施策の前と比べて層ごとの動きを読みます。差の出た月ごとに背景がちがうので、月を取りちがえると、確かめる点も取りちがえます。
- 表1 の『差』の列で、プラスなのは8月(+0.3)と10月(+0.3)です。表2 の8月の行を見ると、『他社のキャンペーン』の列が「あり(乗り換え割引)」で、『案内メールの送付』の列は予定どおり60,000件送れています。案内を送る3年以上の解約率は1.7%で、7月の1.8%より下がっており、差は案内の対象の外から出ていると考えられます。目標は毎月0.1ポイントずつ下げていますが、6月、7月、9月は目標を達成しているので、下げ幅が大きすぎるとは言えません。したがって a は他社のキャンペーンの影響です。
- 表2 の10月の行を見ると、『案内メールの送付』の列は予定60,500件に対して実績24,000件と、約4割しか送れていません。『3年以上の解約率』の列は、9月の1.7%から2.1%に上がっています。『他社のキャンペーン』の列は「あり(小規模)」ですが、キャンペーンの影響なら、案内を送らない層も上がるはずです。『3年未満の解約率』の列は、9月の2.7%から2.6%で、上がっていません。上がったのは案内を送る層だけなので、先に確かめるのは送付の実績です。したがって b は案内メールの送付の実績です。
- 表3 の『解約率(5月)』の列と『解約率(8月)』の列を比べると、案内メールを送る3年以上は2.0%から1.7%に下がり、案内メールを送らない1年以上3年未満(2.8%から3.2%)と1年未満(4.5%から5.2%)は上がっています。8月は他社の乗り換え割引があった月ですが、その同じ条件でも送る層は上がらず、10月は送付が足りなかったために送る層だけが上がっています(表2)。案内メールの役目が、送る層に表れているということです。案内を送っている層は施策の前より下がっているので、案内の回数や文面を変える根拠は表3 にありません。したがって、a は他社のキャンペーンの影響、b は案内メールの送付の実績、c は案内を送る契約期間の範囲で、ク です。
ほかの選択肢
- a が案内メールの送付の実績・月ごとの目標の下げ幅の組合せ(ア、イ、エ、オ、カ、ケ):案内メールの送付の実績は、表2 の8月の行で、予定60,000件に対して実績60,000件と、予定どおりに送れており、3年以上の解約率も前の月より下がっています。月ごとの目標の下げ幅は、毎月0.1ポイントで同じです。6月、7月、9月は目標を達成しており、下げ幅が差の要因とは言えません。
- b が他社のキャンペーンの影響・月ごとの目標の下げ幅の組合せ(ア、イ、ウ、エ、カ、ケ):他社のキャンペーンの影響は、表2 の10月の行で小規模なキャンペーンがありますが、『3年未満の解約率』の列が9月の2.7%から2.6%で上がっていません。キャンペーンの影響なら、案内を送らない層も上がるので、3年以上だけが上がった理由として先に確かめる点ではありません。月ごとの目標の下げ幅は、9月に目標を達成していて、10月だけ大きく変わったわけではありません。
- c が案内を送る月ごとの回数・案内の文面と特典の内容の組合せ(ア、イ、エ、カ、キ、ケ):いま案内を送っている契約3年以上は、表3 で5月の2.0%から8月の1.7%に下がっているので、回数や文面を変える根拠がありません。上がっているのは、案内を送っていない層です。
覚えておくこと
- 目標と実績の差は、差が出た月ごとに、背景(他社の動き、施策の実施の状況、施策の対象の層の動き)を並べて、要因を確かめる。この事例では、8月は他社のキャンペーンで案内を送らない層が上がり、10月は案内メールが予定どおり送れず案内を送る層が上がったので、月ごとに確かめる点が別になる。
- 差の要因を疑うときは、差が出ていない月の状況と比べる。この事例では、目標の下げ幅は毎月同じで、差が出ていない月もあるので、下げ幅は差の要因とは言えない。
- 施策の効果は、同じ層を施策の前と後で比べて見る。この事例では、案内を送る層だけが5月より下がり、送らない層は上がった。ただし、前後の比べだけでは他の要因を除けないので、効果と言い切らず、他の要因も確かめる。下がった層は今のやり方を続け、届いていない層への広げ方を見直す。
(科目B・2-4)