科目B|B2 データ活用による意思決定・検証と改善
分析の記録と教訓の共有
IPA が公表した試験の範囲の案(2026年8月31日)の「データ活用プロセスの改善及び得られた教訓の共有」に当たります。
建設業のA社では、工事の工期が遅れることが続いている。X部長は、工期が遅れた要因を分析し、結果をあとから別の担当者も使える形で残すよう、Yさんに頼んだ。Yさんは、2024年度に完了した工事を調べて、分析した。
A社には、分析の記録の書き方と、記録から出した教訓を共有するときのきまりがある。これを表1 に示す。Yさんが書いた記録を表2 に示す。
Yさんは、分析の結果から、教訓の案を4つ出した。案ごとの根拠の件数、当てはまる条件、次の行動を表3 にまとめた。ほかの工事を担当する人が、あとから記録と教訓を使う予定である。
X部長は、使われる前に、Zさんに、記録と教訓の案を表1 に照らして確かめるよう頼んだ。Zさんの確かめの結果は次のとおりである。
表2 の記録のうち、表1 の No.1〜No.5 の基準に合っていない項目は【a】である。表3 の教訓の案のうち、表1 の No.6 のきまりに合い、いまのまま共有できるのは【b】である。表3 の『設計変更の連絡の遅れ』の案は、当てはまる条件を【c】に直せば、表1 の No.6 のきまりに合う。
表1 分析の記録と教訓の共有の基準
| No. | 項目 | 書く内容 |
|---|---|---|
| 1 | 目的 | 何を明らかにするための分析かを、1文で書く。 |
| 2 | 前提条件 | 対象にした工事の範囲と期間、除いた工事とその理由を書く。 |
| 3 | 使ったデータ | データの名前、取得元の部署、取得した日を書く。 |
| 4 | 方法と判断の過程 | 分析の方法と、結論を決めた理由を書く。 |
| 5 | 結論と注意点 | 結論と、その結論が当てはまらない場合を書く。 |
| 6 | 教訓の共有 | 根拠の件数が10件以上で、当てはまる条件が記録の『前提条件』の範囲に入り、次の行動が書いてある案だけを共有する。 |
No.1〜No.5 は、分析の記録に書く項目である。No.6 は、記録から出した教訓の案を共有するときのきまりである。
表2 Yさんの記録
| 項目 | 記載の内容 |
|---|---|
| 目的 | 2024年度に完了した工事の、工期の遅れの主な要因を明らかにする。 |
| 前提条件 | 2024年度に完了した工事のうち、公共工事40件を対象にした。民間工事は、発注者の事情が異なるため除いた。 |
| 使ったデータ | 工程管理システムの工程表データと、現場の日報データを使った。 |
| 方法と判断の過程 | 工事ごとに、遅れ日数が最も多かった要因を1つ決め、要因ごとに工事の件数を数えた。件数が最も多い要因を、主な要因とした。 |
| 結論と注意点 | 主な要因は、協力会社の人手不足である。ただし、民間工事には当てはまるとは限らない。 |
表2 は、Yさんが書いた記録の全文である。
表3 教訓の案
| 教訓の案 | 根拠の件数 | 当てはまる条件 | 次の行動 |
|---|---|---|---|
| 協力会社の人手不足 | 13件 | 前提条件のとおり | 未定 |
| 資材の納入遅れ | 11件 | 前提条件のとおり | 資材の発注を、着工の2か月前までに行う |
| 設計変更の連絡の遅れ | 10件 | 民間工事を含む全ての工事 | 設計変更を、1週間以内に関係者へ連絡する |
| 天候による作業の中断 | 6件 | 前提条件のとおり | 雨の日の作業の組み方を、着工前に決める |
根拠の件数は、その要因の遅れ日数が最も多かった工事の件数である。『前提条件のとおり』は、表2 の『前提条件』と同じ範囲に当てはまるという意味である。
設問
本文中の【a】〜【c】に入れる字句の組合せとして、最も適切なものを解答群の中から選べ。
- 表2 の記録のうち、表1 の No.1〜No.5 の基準に合っていない項目は【a】である。
- 表3 の教訓の案のうち、表1 の No.6 のきまりに合い、いまのまま共有できるのは【b】である。
- 表3 の『設計変更の連絡の遅れ』の案は、当てはまる条件を【c】に直せば、表1 の No.6 のきまりに合う。
| 記号 | 【a】 | 【b】 | 【c】 |
|---|---|---|---|
| ア | 使ったデータ | 資材の納入遅れ | 2024年度に完了した公共工事 |
| イ | 結論と注意点 | 資材の納入遅れ | 2024年度に完了した公共工事 |
| ウ | 使ったデータ | 天候による作業の中断 | 2024年度に完了した公共工事 |
| エ | 使ったデータ | 資材の納入遅れ | 2024年度に完了した全ての工事 |
| オ | 結論と注意点 | 協力会社の人手不足 | 2024年度に完了した民間工事 |
| カ | 結論と注意点 | 天候による作業の中断 | 2024年度に完了した全ての工事 |
| キ | 前提条件 | 協力会社の人手不足 | 2024年度に完了した全ての工事 |
| ク | 前提条件 | 天候による作業の中断 | 2024年度に完了した民間工事 |
| ケ | 前提条件 | 協力会社の人手不足 | 2024年度に完了した民間工事 |
正解:ア a:使ったデータ b:資材の納入遅れ c:2024年度に完了した公共工事
ポイント
この問題で試すのは、分析の記録に必要な項目が書かれているかを基準に照らして確かめ、共有する教訓の案を、根拠の件数・当てはまる条件・次の行動で見分ける力です。
考え方と解き方
表1 を物差しにして、表2 の記録を項目ごとに、表3 の教訓の案を No.6 のきまりに、1つずつ照らします。取りちがえやすいのは、件数が最も多い案や、項目の書き方が短い所に目が行くことです。きまりの条件は、すべて満たしているかを確かめます。
- 表1 の No.3 の行より、『使ったデータ』には、データの名前、取得元の部署、取得した日を書きます。表2 の『使ったデータ』の行には、データの名前だけで、取得元の部署も取得した日もありません。ほかの項目は基準どおりです。『前提条件』の行には、範囲と期間、除いた工事とその理由があり、『結論と注意点』の行には、民間工事には当てはまるとは限らないという、当てはまらない場合があります。したがって a は使ったデータです。
- 表1 の No.6 の行より、共有できるのは、根拠の件数が10件以上、当てはまる条件が前提条件の範囲、次の行動が書いてある案です。表3 の『根拠の件数』の列で10件以上なのは、協力会社の人手不足(13件)、資材の納入遅れ(11件)、設計変更の連絡の遅れ(10件)です。このうち、『次の行動』の列が未定の人手不足は外れます。『当てはまる条件』の列が民間工事を含む全ての工事の設計変更の連絡の遅れも、表2 の『前提条件』の行で民間工事を除いているので、範囲を超えます。したがって b は資材の納入遅れです。
- 表3 の設計変更の連絡の遅れの行は、件数が10件で、次の行動も書いてあるので、直す所は『当てはまる条件』の列だけです。表2 の『前提条件』の行より、記録の対象は2024年度に完了した公共工事で、民間工事は除いています。したがって c は2024年度に完了した公共工事です。a は使ったデータ、b は資材の納入遅れ、c は2024年度に完了した公共工事で、ア です。
ほかの選択肢
- a が結論と注意点・前提条件の組合せ(イ、オ、カ、キ、ク、ケ):結論と注意点は、結論と、民間工事には当てはまるとは限らないという注意が書いてあり、表1 の No.5 に合っています。前提条件は、範囲と期間、除いた工事とその理由があり、表1 の No.2 に合っています。
- b が天候による作業の中断・協力会社の人手不足の組合せ(ウ、オ、カ、キ、ク、ケ):天候による作業の中断は、条件も次の行動もありますが、根拠の件数が6件で、10件に届きません。協力会社の人手不足は、件数が最も多い13件ですが、次の行動が未定で、表1 の No.6 に合いません。
- c が2024年度に完了した全ての工事・2024年度に完了した民間工事の組合せ(エ、オ、カ、キ、ク、ケ):2024年度に完了した全ての工事は、民間工事を含み、表2 の『前提条件』の行で除いた工事が入ります。2024年度に完了した民間工事は、期間は合いますが、表2 の『前提条件』の行で除いた工事で、対象にした工事ではありません。
覚えておくこと
- 分析の記録は、あとから使う人が読んで分かるよう、項目ごとに残す。この事例の表1 では、目的、前提条件、使ったデータの名前・取得元・取得した日、方法と判断の過程、結論と当てはまらない場合を書く。データの名前だけでは、取得元と日が残らない。
- 教訓の共有では、根拠の件数、当てはまる条件、次の行動を確かめる。この事例の表1 の No.6 では、3つがそろった案だけを共有し、件数が最も多い案でも、次の行動が決まっていなければ共有しない。
- 教訓の当てはまる条件は、分析した対象の範囲の中で書く。この事例では、公共工事だけを分析したので、民間工事を含めた教訓にはしない。
(科目B・2-5)