監査の指摘への再発防止策

シラバス案 Ver.0.1(2026年9月30日公表)の科目B 大項目10 コンプライアンスの運用:『10-2 順守状況の評価と改善』

想定の事例|監査の指摘への再発防止策科目B(事例)

事例

A 社は、従業員 400 名の建設会社である。現場管理部は、全国の工事現場の安全や工程を管理し、各現場の事務所で、協力会社の作業員名簿(氏名、生年月日、住所、緊急連絡先)を取り扱っている。現場管理部の情報セキュリティ担当者(以下、担当者)は、毎年 4 月に全従業員へ「現場事務所の個人情報取扱規程」の教育を行っており、今年度も全員が受講した。

今回、内部監査部が 4 現場を監査し、3 件の指摘を出した。担当者は、規程の関係する条を表1に、指摘の内容と現場への聞き取りで分かった原因を表2にまとめた。

表1 規程の抜粋
条内容
第3条(名簿の保管)作業員名簿は、現場事務所内の施錠できるキャビネットに保管し、現場代理人が指名した者だけが取り扱う。
第5条(現場の写真)現場の写真は、会社が貸与したタブレットで撮影する。私物の端末で撮影しない。
第6条(入場時の説明)新たに入場する作業員には、入場の日に現場代理人が規程の説明を行い、受講記録に署名を残す。
表2 監査の指摘と原因
No.関係する条指摘の内容聞き取りで分かった原因
1第3条4 現場のうち 2 現場で、日中、作業員名簿が施錠したキャビネットの外にあった。名簿は朝の入場確認で毎日使う。キャビネットは受付から遠い奥の部屋にあり、取りに行くのが面倒で、受付の机の引き出しに置いていた。
2第5条従業員 2 名の私物のスマートフォンに、現場の写真が残っていた。貸与のタブレットは現場に 1 台しかない。工程上、複数の場所で同時に撮影する必要があり、足りない。規程は知っていた。
3第6条1 現場で、入場した作業員 6 名分の受講記録がなかった。現場代理人が交代したとき、前任者から「入場の日に説明をする」という手順の引き継ぎがなかった。

A 社の改善計画のルールは、次のとおりである。
・指摘ごとに、応急の措置と再発防止策を分けて計画する。応急の措置は、指摘された状態をすぐに直すことである。
・再発防止策は、表2の原因を取り除くものにする。原因の一部しか取り除かない策や、別の原因を取り除く策は、再発防止策にしない。
・再発防止策は、規程の内容を変えずに、規程を守れるようにするものにする。規程を変える場合は、別に見直しの手続きをとる。
・実施後は、次回の自己点検で効果を確認し、現場管理部長に報告する。

担当者は、再発防止策を表3にまとめることにした。

表3 再発防止策
No.再発防止策実施する者効果の確認
1a1現場管理部次回の自己点検
2a2現場管理部次回の自己点検
3a3現場管理部次回の自己点検

表3中の a1〜a3 に入れる再発防止策の適切な組合せを、解答群の中から選べ。

正解:コ a1:施錠できるキャビネットを受付の近くに移す/a2:貸与するタブレットを、同時に撮影する数だけそろえる/a3:現場代理人の交代時の引き継ぎ項目に、入場時の説明を加える

ポイント

内部監査の指摘に対して、原因を取り除く再発防止策を、改善計画のルールから判断する事例です。

考え方と解き方

この立場なら、まず表2の「原因」を指摘ごとに読み、その原因を全部取り除く策かどうかを見ます。間違えやすいのは、もっともらしいが原因の一部にしか触れない策や、規程を変えてしまう策を選ぶことです。本文のルールは、規程を変えない策だけを再発防止策とします。

  1. No.1 の原因は、キャビネットが受付から遠いことです。第3条を変えずに、キャビネットを受付の近くに移す策が、原因を取り除きます(a1)。
  2. No.2 の原因は、同時に撮影する必要があるのにタブレットが 1 台しかないことです。同時に撮影する数だけそろえる策が原因を取り除きます(a2)。No.3 の原因は、手順の引き継ぎがなかったことです。引き継ぎ項目に加える策が原因を取り除きます(a3)。
  3. したがって、適切なのは a1、a2、a3 の全てで、コ です。

ほかの選択肢

  • ア a1は不適切です。写しも第3条の名簿で、施錠したキャビネットの外に置くことになり、第3条に合いません。a2は不適切です。工程上、同時に撮影する必要があるので、時間を分けても同時に撮影すると足りない原因が残ります。a3は不適切です。月末の確認は、記録がないことを見つける策で、原因(引き継ぎがなかった)を取り除きません。
  • イ a1は不適切です。第3条は「施錠できるキャビネット」に保管する定めで、引き出しに変えるのは規程を変えることになります。a3は不適切です。第6条は入場の日の説明を現場代理人が行うと定めており、受付の担当者に替えるのは規程を変えることになります。
  • ウ a1は不適切です。朝の間でも施錠したキャビネットの外に出すのは、第3条を変えることになり、再発防止策のルールに合いません。a2は不適切です。私物の端末で撮影しないと定める第5条を、変えることになります。a3は不適切です。資料を直しても、入場の日に説明をする手順が引き継がれない原因は残ります。
  • エ a2は不適切です。工程上、同時に撮影する必要があるので、時間を分けても同時に撮影すると足りない原因が残ります。a3は不適切です。月末の確認は、記録がないことを見つける策で、原因(引き継ぎがなかった)を取り除きません。
  • オ a1は不適切です。第3条は「施錠できるキャビネット」に保管する定めで、引き出しに変えるのは規程を変えることになります。a2は不適切です。置き場を変えても、同時に撮影すると台数が足りない原因は残ります。
  • カ a1は不適切です。写しも第3条の名簿で、施錠したキャビネットの外に置くことになり、第3条に合いません。a2は不適切です。私物の端末で撮影しないと定める第5条を、変えることになります。a3は不適切です。資料を直しても、入場の日に説明をする手順が引き継がれない原因は残ります。
  • キ a1は不適切です。写しも第3条の名簿で、施錠したキャビネットの外に置くことになり、第3条に合いません。a2は不適切です。置き場を変えても、同時に撮影すると台数が足りない原因は残ります。a3は不適切です。第6条は入場の日の説明を現場代理人が行うと定めており、受付の担当者に替えるのは規程を変えることになります。
  • ク a1は不適切です。第3条は「施錠できるキャビネット」に保管する定めで、引き出しに変えるのは規程を変えることになります。a2は不適切です。私物の端末で撮影しないと定める第5条を、変えることになります。a3は不適切です。月末の確認は、記録がないことを見つける策で、原因(引き継ぎがなかった)を取り除きません。
  • ケ a1は不適切です。朝の間でも施錠したキャビネットの外に出すのは、第3条を変えることになり、再発防止策のルールに合いません。a2は不適切です。工程上、同時に撮影する必要があるので、時間を分けても同時に撮影すると足りない原因が残ります。a3は不適切です。月末の確認は、記録がないことを見つける策で、原因(引き継ぎがなかった)を取り除きません。

覚えておくこと

  • 監査の指摘への再発防止策は、応急の措置と分け、聞き取りで分かった原因を全部取り除く策にする
  • 原因の一部にしか触れない策や、規程を変える策は、再発防止策にならない。規程を変える策は、別の見直しの手続きで扱う
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