脆弱性情報の緊急性の評価

シラバス案 Ver.0.1(2026年9月30日公表)の科目B 大項目12 情報セキュリティに関する動向・事例情報の収集と評価:『12-1 情報セキュリティに関する動向・事例情報の収集と評価』

想定の事例|脆弱性情報の緊急性の評価科目B(事例)

事例

A 社は、従業員 400 名の樹脂成形品メーカーである。工場の生産管理部では、情報セキュリティ担当者(以下、担当者)が、毎週月曜日に、IPA の注意喚起や製品ベンダーの情報などを集め、生産管理部への影響を評価して、部長に報告している。生産管理部で使っている製品を、表1に示す。

表1 生産管理部で使っている製品
製品用途バージョン
製品 P生産管理システムの Web 画面を動かす実行環境8.2
製品 Q協力工場との間の保守用 VPN 装置(1 台)5.0
製品 T日報の要約や作業手順書の下書きに使う生成 AI の業務支援ツール(AI エージェント機能つき)2.3

生産管理部の手順では、集めた情報を、次の三つの区分で評価する。
・即日対応:使っている製品が情報の対象バージョンに当たり、かつ、その脆弱性を悪用した攻撃が確認されているもの。当日中に部長に報告し、暫定の対策を行う。
・計画対応:使っている製品が対象バージョンに当たるが、攻撃は確認されていないもの。修正版の適用を、次の月次保守日に計画する。
・共有のみ:使っていない製品、または対象バージョンに当たらないもの。記録して、部内に共有するにとどめる。

なお、IPA の注意喚起では、影響度の高い問題が公開され、かつ、その問題を悪用した攻撃が行われているものに【緊急】が付く。影響度の高い問題が公開されたもの、または今後攻撃が行われる可能性があり対策が必要なものには、【注意】が付く。

今週、担当者は三つの情報を集め、手順に従って評価した結果を表2にまとめた。ただし、評価の欄の a1〜a3 は、空欄にしてある。

表2 今週集めた情報と評価
情報情報源内容対象バージョン攻撃の状況評価
1IPA の注意喚起(【緊急】)製品 Q に、認証を受けずに、外部から装置を操作される脆弱性5.1 未満攻撃が確認されているa1
2製品 P のベンダーの情報製品 P に、細工した要求で任意のプログラムを実行される脆弱性。修正版を公開8.0 以上 8.3 以下攻撃は確認されていないa2
3IPA の注意喚起(【緊急】)製品 T の AI エージェント機能に、読み込ませた文書の中の指示に従って、社内の情報を外部に送ってしまう脆弱性2.0 未満攻撃が確認されているa3

表2中の a1〜a3 に入れる評価の組合せとして適切なものを、解答群の中から選べ。

正解:ウ a1:即日対応/a2:計画対応/a3:共有のみ

ポイント

集めた脆弱性情報を、自部門の使用状況と攻撃の有無に当てはめて、対応の緊急性を評価する事例です。

考え方と解き方

決め手は、表1の使っている製品とバージョン、表2の対象バージョンと攻撃の状況、本文の三つの区分です。IPA の【緊急】は、攻撃が行われている問題に付きますが、自部門で対応が要るかどうかは、使っている製品が対象バージョンに当たるかで決まります。間違えやすいのは、情報源の【緊急】や生成 AI という話題だけで、即日対応と決めてしまうことです。

  1. 情報1は、表1で製品 Q は 5.0 です。対象の「5.1 未満」に当たり、攻撃が確認されているので、a1 は即日対応です。
  2. 情報2は、製品 P は 8.2 で、対象の「8.0 以上 8.3 以下」に当たります。攻撃は確認されていないので、a2 は計画対応です。
  3. 情報3は、製品 T は 2.3 で、対象の「2.0 未満」に当たりません。【緊急】が付き、攻撃が確認されていても、使っている版が対象外なので、a3 は共有のみです。
  4. したがって、適切なのは a1:即日対応、a2:計画対応、a3:共有のみで、ウ です。

ほかの選択肢

  • ア a1 が不適切です。製品 Q は 5.0 で、対象の「5.1 未満」に当たり、攻撃も確認されているので、計画対応ではなく即日対応です。 a2 が不適切です。製品 P は 8.2 で、対象の「8.0 以上 8.3 以下」に当たるので、共有のみにはできません。 a3 が不適切です。製品 T は 2.3 で、対象の「2.0 未満」に当たらないので、修正版の適用を計画する必要はありません。
  • イ a1 が不適切です。製品 Q は 5.0 で、対象の「5.1 未満」に当たり、攻撃も確認されているので、計画対応ではなく即日対応です。
  • エ a1 が不適切です。製品 Q は使っていて、5.0 は対象の「5.1 未満」に当たるので、共有のみにはできません。 a2 が不適切です。表2の攻撃の状況は「確認されていない」なので、製品 P は即日対応ではなく計画対応です。 a3 が不適切です。製品 T は 2.3 で、対象の「2.0 未満」に当たらないので、【緊急】で攻撃が確認されていても、即日対応にはなりません。
  • オ a2 が不適切です。表2の攻撃の状況は「確認されていない」なので、製品 P は即日対応ではなく計画対応です。
  • カ a1 が不適切です。製品 Q は 5.0 で、対象の「5.1 未満」に当たり、攻撃も確認されているので、計画対応ではなく即日対応です。 a2 が不適切です。表2の攻撃の状況は「確認されていない」なので、製品 P は即日対応ではなく計画対応です。 a3 が不適切です。製品 T は 2.3 で、対象の「2.0 未満」に当たらないので、【緊急】で攻撃が確認されていても、即日対応にはなりません。
  • キ a1 が不適切です。製品 Q は使っていて、5.0 は対象の「5.1 未満」に当たるので、共有のみにはできません。 a2 が不適切です。製品 P は 8.2 で、対象の「8.0 以上 8.3 以下」に当たるので、共有のみにはできません。 a3 が不適切です。製品 T は 2.3 で、対象の「2.0 未満」に当たらないので、【緊急】で攻撃が確認されていても、即日対応にはなりません。
  • ク a3 が不適切です。製品 T は 2.3 で、対象の「2.0 未満」に当たらないので、修正版の適用を計画する必要はありません。
  • ケ a1 が不適切です。製品 Q は 5.0 で、対象の「5.1 未満」に当たり、攻撃も確認されているので、計画対応ではなく即日対応です。 a2 が不適切です。製品 P は 8.2 で、対象の「8.0 以上 8.3 以下」に当たるので、共有のみにはできません。 a3 が不適切です。製品 T は 2.3 で、対象の「2.0 未満」に当たらないので、【緊急】で攻撃が確認されていても、即日対応にはなりません。
  • コ a1 が不適切です。製品 Q は使っていて、5.0 は対象の「5.1 未満」に当たるので、共有のみにはできません。 a2 が不適切です。製品 P は 8.2 で、対象の「8.0 以上 8.3 以下」に当たるので、共有のみにはできません。 a3 が不適切です。製品 T は 2.3 で、対象の「2.0 未満」に当たらないので、修正版の適用を計画する必要はありません。

覚えておくこと

  • 収集した脆弱性情報は、自部門で使っている製品とバージョンが対象に当たるか、攻撃が確認されているかの二つで、対応の緊急性を決める
  • 情報源の【緊急】や話題性(生成 AI など)だけで、自部門の対応を決めない。【緊急】は攻撃が行われている問題に付き、自部門が対象かは別に確かめる
前の事例