メール誤送信の原因と再発防止
シラバス案 Ver.0.1(2026年9月30日公表)の科目B 大項目8 情報セキュリティインシデントの管理:『8-3 分析及び復旧』『8-4 再発防止策の提案・実施』
事例
A 社は、従業員 350 名の通信販売会社である。コールセンター部(60 名)は、注文や問合せの電話を受けるほか、顧客への案内メールを送っている。部の手順書では、複数の顧客に同じ案内を送るときは、部の配信システムを使う。配信システムは、宛先の顧客ごとに 1 通ずつメールを作って送るので、受信者にはほかの受信者のアドレスが見えない。また、送信の前に、送る者とは別の者が、配信システムの画面で宛先の件数と本文を確認する。
10 月 6 日の 14 時 5 分に、コールセンター部の E さんが、セールの締切を知らせる案内メールを、顧客 320 名のアドレスが全員に見える形で送ってしまった。翌朝、受信した顧客からの問合せで分かった。コールセンター部の情報セキュリティ担当者(以下、担当者)は、部長の指示で、受信した顧客へのおわびとメールの削除のお願いを済ませた。
続いて担当者は、情報システム部の協力を受けて、メールの送信記録と配信システムの操作記録を調べ、関係者に聞き取りをした。結果を表1に示す。
| 項番 | 調べたこと | 分かったこと |
|---|---|---|
| 1 | メールの送信記録 | 10 月 6 日 14 時 5 分に、E さんのメールソフトから 1 通が送られ、宛先の欄に 320 名のアドレスが入っていた。配信システムからの送信の記録はない。 |
| 2 | 配信システムの操作記録 | 10 月 6 日の 13 時から 15 時まで、計画したメンテナンスで止まっていた。止まることは、1 週間前に部の全員に知らされていた。 |
| 3 | E さんへの聞き取り | 締切が当日中で、再開を待てないと思い、メールソフトから送った。宛先を見えない形にする操作は知っていたが、急いでいて宛先の欄に貼り付けた。 |
| 4 | 手順書 | 配信システムが使えないときの扱いは書かれていない。 |
| 5 | ほかの部員への聞き取り | これまでにも、配信システムが止まったときに、メールソフトから数十件の宛先に送った者が 3 名いた。 |
| 6 | 送信前の確認 | メールソフトから送るときは、別の者の確認は行われていなかった。 |
A 社の規程では、再発防止策は、特定の者の注意に頼らず、担当者が替わっても同じ事故が起きないようにする恒久的な策とする。担当者は、表1を基に、原因と再発防止策を次のようにまとめ、部長に報告することにした。
・原因:a
・再発防止策:b
本文中の a に入れる原因と、b に入れる再発防止策の組合せとして、最も適切なものを、解答群の中から選べ。
正解:ケ a:配信システムが使えないときの扱いがなく、確認のない方法で送ったこと/b:止まっている間は再開を待つと手順書に加え、メールソフトでは多数の宛先に送れない設定にする
ポイント
宛先が見える形で送ったメールの事故について、記録と聞き取りから原因を特定し、恒久的な再発防止策を選ぶ事例です。
考え方と解き方
決め手は表1の項番2〜6と、本文の「特定の者の注意に頼らない恒久的な策」という規程です。E さん一人の操作の誤りに見えますが、項番5でほかの部員も同じ送り方をしており、仕組みの穴が原因だと読む点で間違えやすいです。
- 項番2で停止は事前に知らされており、項番3で E さんは操作を知っていたので、この二つは原因ではありません。
- 項番1・4・6から、配信システムが使えないときの扱いが手順書になく、別の者の確認がないメールソフトから送ったことが原因です(a)。項番5のとおり、ほかの部員も同じ送り方をしていました。
- 再発防止策は、その原因に対して、担当者が替わっても起きない仕組みにします。停止中の扱いを手順書に加え、メールソフトで多数の宛先に送れないようにする策が当たります(b)。
- したがって、最も適切な組合せは ケ です。
ほかの選択肢
- ア a、b とも誤りです。項番3で E さんは操作を知っていました。担当を替えても、項番5のとおりほかの部員も同じ送り方をしており、特定の者に頼る策になります。
- イ a が誤りです。項番2で、停止は 1 週間前に部の全員に知らされていました。
- ウ b が誤りです。E さんは操作を知っていたので、研修では、確認のない方法で送れてしまう原因が残ります。
- エ a、b とも誤りです。項番3で E さんは操作を知っており、操作の研修は原因に対する策になりません。
- オ a、b とも誤りです。停止は事前に知らされていました。担当を替える策は、特定の者に頼る策で、規程の恒久的な策に当たりません。
- カ a、b とも誤りです。項番2で停止は事前に知らされていました。もう一度知らせても、止まっている間の扱いがないままで、同じ事故が起き得ます。
- キ a が誤りです。項番3で E さんは操作を知っていました。b は適切です。
- ク a、b とも誤りです。停止は事前に知らされており、操作の研修は、確認のない方法で送れてしまう原因に当たりません。
覚えておくこと
- 原因は、送信記録・操作記録と聞き取りを合わせて特定し、本人の誤りに見えても、ほかの者にも起き得る仕組みの穴を探す
- 再発防止策は、事故が起きた時の業務の抜け道(代わりの手順の欠け)をふさぎ、人が替わっても同じ操作ができない形にする