入稿データの受取と調達の仕様
シラバス案 Ver.0.1(2026年9月30日公表)の科目B 大項目3 情報資産に関する情報セキュリティ要求事項の提示:『3-1 部門の情報システムの調達・利用に関する組織的・人的・物理的・技術的な要求事項の提示』
事例
A 社は、従業員 150 名の印刷会社である。営業部(20 名)は、顧客から印刷用の入稿データを受け取り、制作部に渡している。これまでは、顧客が光ディスクを郵送するか、メールに添付して送っていたが、ファイルが大きくてメールで送れない、光ディスクの到着が遅れるといった問題が続いた。そこで営業部は、入稿データを受け取るためのファイル共有サービスを新しく調達することにした。入稿データには、顧客の発表前の商品の広告や、顧客の会員名簿を使った宛名印刷のデータが含まれることもある。
調達は情報システム部が行い、営業部は、仕様にのせる要求事項を情報システム部に示す。営業部の情報セキュリティ担当者(以下、担当者)は、営業部の業務の条件を表1にまとめた。
| 項番 | 条件 |
|---|---|
| 1 | 入稿データは、1 ファイルで最大 5 GB になる。 |
| 2 | 顧客は利用者 ID を持たない。営業部員が顧客ごとに発行する受付用のリンクから入稿データをアップロードするだけで、ほかのデータは見られない。 |
| 3 | 入稿データを見られるのは、その顧客の担当営業と、制作部の担当者だけとする。 |
| 4 | 顧客との契約で、入稿データは、印刷の完了日から 60 日を過ぎたら消去すると約束している。印刷の完了日は案件ごとに異なり、入稿から数か月かかる案件もある。 |
| 5 | 入稿データには、顧客の PC から持ち込まれたマルウェアが含まれることがあるので、制作部の PC で開く前に検査する。 |
情報システム部の C 主任は、表1を基に、表2の仕様の案を作った。
| 項番 | 要求事項 |
|---|---|
| 1 | 1 ファイル 10 GB までアップロードできること。 |
| 2 | 営業部員が、顧客ごとに、アップロードだけができる有効期限付きの受付用リンクを発行できること。 |
| 3 | フォルダーごとに、閲覧できる利用者を、担当営業と制作部の担当者に限れること。 |
| 4 | アップロードされたファイルを、保存する前にマルウェア対策ソフトで検査し、検出したときは隔離して営業部に知らせること。 |
| 5 | サービスの管理者を情報システム部、フォルダーの利用者の設定を各担当営業とし、その役割を運用手順書に定めること。 |
| 6 | ログイン、アップロード、ダウンロードの記録を 1 年間保存すること。 |
担当者は、表1の条件のうち、表2の仕様の案で満たされていないものがないかを確かめ、追加する要求事項を C 主任に示すことにした。
担当者が、表1の条件を満たすために表2の仕様の案に追加する要求事項として、最も適切なものを、解答群の中から選べ。
正解:ア 印刷の完了日を案件ごとに登録でき、その日から 60 日を過ぎた入稿データを自動で消去し、記録を残せること。
ポイント
部門の業務の条件と調達の仕様の案を突き合わせ、足りない要求事項を見つけて示す事例です。
考え方と解き方
決め手は、表1の条件を1つずつ表2の項番と結び付けることです。条件4(印刷の完了日から 60 日で消去)に当たる要求事項が表2にありません。消去の起点を「アップロードした日」と読みかえてしまう点で間違えやすいです。
- 表1の条件1は表2の1、条件2は表2の2、条件3は表2の3、条件5は表2の4で満たされています。表2の5と6は、運用の責任と記録の要求事項です。
- 条件4の、印刷の完了日から 60 日を過ぎた入稿データの消去に当たる要求事項は、表2にありません。印刷の完了日は案件ごとに異なるので、完了日を登録でき、その日を起点に消去できることが要ります。
- したがって、最も適切なのは ア です。
ほかの選択肢
- イ 不適切です。消去の起点がアップロードした日になっています。入稿から印刷の完了まで数か月かかる案件もあるので、印刷の前に入稿データが消えるおそれがあり、条件4の約束(印刷の完了日から 60 日)とも合いません。
- ウ 不適切です。条件2では、顧客は利用者 ID を持たず、アップロードするだけで、ほかのデータは見られないことになっています。
- エ 不適切です。条件1(最大 5 GB)は、表2の1(10 GB まで)で既に満たされています。足りない要求事項ではありません。
- オ 不適切です。条件5の検査は、表2の4で、保存する前に行うことになっており、既に満たされています。満たされていない条件(条件4)に答える要求事項ではありません。
- カ 不適切です。条件3では、入稿データを見られるのは、その顧客の担当営業と制作部の担当者だけです。
覚えておくこと
- 要求事項を示すときは、業務の条件を1つずつ仕様の項目と突き合わせ、対応する項目がない条件を見つける
- データの消去や保管の期間は、契約や業務で決めた起点(完了日など)から数える要求事項にする