予約システム停止訓練の振り返り

シラバス案 Ver.0.1(2026年9月30日公表)の科目B 大項目4 情報セキュリティを継続的に確保するための情報セキュリティ要求事項の提示:『4-1 情報セキュリティを継続的に確保するための情報セキュリティ要求事項の提示』

想定の事例|予約システム停止訓練の振り返り科目B(事例)

事例

A 社は、3 つのホテルを運営する会社である。B ホテルの宿泊部(フロント係 12 名、客室係 15 名)は、予約管理システムで、宿泊者の氏名、住所、電話番号、部屋番号を管理している。

A 社の事業継続計画(BCP)では、予約管理システムが止まったときは、紙の代替手順で受付を続け、システムの復旧後に紙の記録を入力することになっている。そのため、フロントでは毎晩、翌日の宿泊者一覧を印刷して備えている。BCP には、「システムが止まっている間も、宿泊者の情報は表1の決まりどおりに扱う。決まりどおりにできない作業があれば、同じように守れるやり方を手順に書き足す」という方針がある。

表1 宿泊者の情報の取扱いの決まり
項番決まり
1宿泊者の情報は、宿泊部の職員だけが見られる方法で扱う。
2宿泊者の情報を入力・変更したときは、入力した者とは別の職員が確認する。
3宿泊者の情報のやり取りには、会社が貸与した機器と、決められた連絡手段だけを使う。
4宿泊者の情報を含む紙は、使い終わったら細断して廃棄する。

宿泊部の情報セキュリティ担当者(以下、担当者)は、予約管理システムが 4 時間止まった想定の訓練を行い、気づいたことを表2の記録にまとめた。

表2 訓練の記録(抜粋)
項番訓練で起きたこと改善点
1前夜に印刷しておいた宿泊者一覧を、フロントのカウンターの上に広げて使い、ロビーの客から見える状態だった。訓練の後、一覧は事務所のごみ箱に捨てられていた。a1
2復旧後、紙の受付票からシステムに入力したが、1 件の部屋番号の誤りが翌朝まで見つからなかった。受付票には、だれが入力したかの記録がなかった。a2
3フロント係が、清掃の指示のため、私物のスマートフォンのメッセージアプリで、宿泊者の氏名と部屋番号を客室係に送った。a3
4バックアップから戻したデータは前日 22 時の時点のもので、それより後の予約が抜けていた。戻した後に、22 時より後の予約を紙の受付票と照らし合わせて入力する手順を追加する。

担当者は、表2の a1〜a3 に、表3の候補から改善点を選んで記入し、宿泊部長に BCP の見直しを提案することにした。

表3 改善点の候補
記号改善点
(一)宿泊者一覧は、フロントの内側の施錠できる引出しに保管し、客から見えない向きで使う。使い終わった一覧は回収して細断する手順を追加する。
(二)紙の受付票に通し番号と入力者の欄を設け、入力した者とは別の職員が、受付票と入力結果を照らし合わせて署名する手順を追加する。
(三)客室係への連絡には、会社が貸与した内線の携帯端末を使い、宿泊者の氏名は伝えず、部屋番号と作業内容だけを伝える手順を追加する。
(四)宿泊者一覧は、フロントの内側の施錠できる引出しに保管し、客から見えない向きで使う。使い終わった一覧は、次の非常時に使えるよう引出しに残す手順を追加する。
(五)紙の受付票に通し番号と入力者の欄を設け、入力した職員が、もう一度受付票と入力結果を照らし合わせて署名する手順を追加する。
(六)客室係への連絡には、職員が私物のスマートフォンで使うメッセージアプリの、宿泊部だけのグループを使い、宿泊者の氏名は送らず、部屋番号と作業内容だけを送る手順を追加する。
(七)宿泊者一覧は、フロント係が交代するときに次の係へ手渡しで引き継ぎ、使い終わった一覧は回収して細断する手順を追加する。

表2中の a1〜a3 に入れる改善点の組合せとして、適切なものを、解答群の中から選べ。

正解:ク a1:(一)/a2:(二)/a3:(三)

ポイント

システムが止まった想定の訓練の記録から、通常時の決まりが守れなかった所を見つけ、BCP に追加する手順を選ぶ事例です。

考え方と解き方

決め手は、表2の各項番が表1のどの決まりを守れなかったかと、BCP の方針「同じように守れるやり方を手順に書き足す」です。表3の候補はよく似ていて、表1の決まりの1か所(客から見えない扱い、細断、別の職員、貸与した機器)を満たしていないものが混じっています。

  1. a1:項番1では、一覧が客から見え(表1の1)、ごみ箱に捨てられていました(表1の4)。(一)は見えない向きと施錠に加えて細断するので、両方を守れます。(四)は使い終わった一覧を細断せずに残すので表1の4を、(七)は細断はしますが客から見える使い方を直していないので表1の1を守れません。
  2. a2:項番2は、入力した者とは別の職員の確認(表1の2)がなかったことです。(二)は別の職員が照らし合わせます。(五)は入力した職員が自分で確かめるだけなので、表1の2を守れません。
  3. a3:項番3は、私物の機器を使ったこと(表1の3)です。(三)は会社が貸与した端末を使います。(六)はグループを限っても私物のスマートフォンを使うので、表1の3を守れません。
  4. したがって、a1:(一)、a2:(二)、a3:(三)の ク です。

ほかの選択肢

  • ア a1 が誤りです。(四)は使い終わった一覧を細断せずに残すので、表1の4を守れません。
  • イ a2 が誤りです。(五)は入力した職員が自分で確かめるだけで、別の職員の確認(表1の2)になりません。a3 も誤りです。(六)は宿泊部だけのグループでも私物のスマートフォンを使うので、会社が貸与した機器を使う表1の3を守れません。
  • ウ a1 が誤りです。(四)は使い終わった一覧を細断せずに残すので、表1の4を守れません。a2 も誤りです。(五)は入力した職員が自分で確かめるだけで、別の職員の確認(表1の2)になりません。
  • エ a3 が誤りです。(六)は宿泊部だけのグループでも私物のスマートフォンを使うので、会社が貸与した機器を使う表1の3を守れません。
  • オ a1 が誤りです。(四)は使い終わった一覧を細断せずに残すので、表1の4を守れません。a3 も誤りです。(六)は宿泊部だけのグループでも私物のスマートフォンを使うので、会社が貸与した機器を使う表1の3を守れません。
  • カ a1 が誤りです。(七)は引継ぎと細断は決めていますが、一覧が客から見える使い方を直しておらず、表1の1を守れません。
  • キ a1 が誤りです。(四)は使い終わった一覧を細断せずに残すので、表1の4を守れません。a2 も誤りです。(五)は入力した職員が自分で確かめるだけで、別の職員の確認(表1の2)になりません。a3 も誤りです。(六)は宿泊部だけのグループでも私物のスマートフォンを使うので、会社が貸与した機器を使う表1の3を守れません。

覚えておくこと

  • BCP の代替手順の間も、通常時の情報の取扱いの決まりを守る。守れない作業は、同じように守れるやり方を手順に書き足す
  • 訓練の振り返りでは、起きたことを通常時の決まりと1つずつ照らし合わせ、どの決まりが守れなかったかから改善点を決める
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