ランサムウェアに備える運用の見直し

シラバス案 Ver.0.1(2026年9月30日公表)の科目B 大項目6 部門の情報システム利用時の情報セキュリティの確保:『6-1 マルウェアからの保護』『6-2 バックアップ』

想定の事例|ランサムウェアに備える運用の見直し科目B(事例)

事例

A 社は、従業員 400 名の家具メーカーである。デザイン部(10 名)は、新商品の図面、CAD のデータ、商品の写真を、部門のファイルサーバーに保存している。ある日、他社がランサムウェアに感染し、ファイルサーバーのデータとバックアップの両方が暗号化されて、業務が長く止まったという報道があった。デザイン部長は、部の情報セキュリティ担当者である B 主任に、部のバックアップとマルウェア対策の運用を見直すよう指示した。

A 社の情報セキュリティ規程のうち、関係する部分は次のとおりである。
・バックアップは毎日取得し、3 世代以上を保存する。そのうち 1 世代以上は、取得のとき以外はネットワークから切り離して保管する。
・バックアップから戻せることを、半年に 1 回以上、試験で確かめ、結果を部門長に報告する。
・マルウェア対策ソフトの定義ファイルは、自動で更新する。検査の対象から外すフォルダーを設けるときは、情報システム部の承認を得る。
・社外から受け取ったファイルのマクロは、既定で実行しない設定とする。実行が必要なときは、メール以外の手段(電話など)で送り主に確かめたうえで、部門の情報セキュリティ担当者の許可を得る。

B 主任が調べたデザイン部の現状を、表1に示す。

表1 デザイン部の現状
項目現状
バックアップの取得毎日 22 時に、ファイルサーバーに常時つないだ外付けディスクへ取得している。前日の分に上書きするので、1 世代だけである。
戻す試験導入してから 3 年間、一度も行っていない。
定義ファイル全ての PC で、自動で更新されている。
検査の対象CAD の動作が遅くなるので、部員の判断で、CAD のデータのフォルダーを検査の対象から外している。情報システム部の承認はない。
マクロ取引先から届く見積書の表計算ファイルのマクロが、開くと自動で実行される設定になっている。

B 主任は、見直し案を次の(一)〜(七)にまとめた。

次の(一)〜(七)のうち、規程に沿った見直し案として適切なものだけを全て挙げた組合せを、解答群の中から選べ。

正解:オ (一)、(三)、(五)

ポイント

規程と部門の現状を突き合わせ、バックアップとマルウェア対策の運用の見直し案が規程に沿っているかを判断する事例です。

考え方と解き方

決め手は、規程の4項目の細かな条件(切り離した保管、部門長への報告、情報システム部の承認、メール以外の手段での確認)です。見直し案は現状より良くなっていても、条件の1か所が規程と違えば不適切になる点で間違えやすいです。

  1. バックアップ:(一)は 3 世代のうち 1 世代を切り離して保管するので適切です。(二)は 3 世代とも常時つないだままで、ネットワークから切り離した世代がなく、ランサムウェアに一緒に暗号化されるおそれがあるので不適切です。(三)は半年に 1 回試験をして部門長に報告するので適切で、(四)は試験をしないので不適切です。
  2. マルウェア対策:(五)は情報システム部の承認を申請し、それまでは検査の対象に戻すので適切です。(六)は承認者がデザイン部長で、規程の情報システム部と違うので不適切です。(七)は既定で実行しない設定は規程どおりですが、確認を届いたメールへの返信で行うので、メール以外の手段という規程に合わず不適切です。
  3. 適切なのは (一)、(三)、(五) の全てで、オ です。

ほかの選択肢

  • ア (二)は不適切です。3 世代ともファイルサーバーに常時つないでおり、切り離して保管する世代がありません。(七)は不適切です。届いたメールへの返信では、メール以外の手段で確かめたことになりません。(一)と(三)が欠けています。
  • イ (七)は不適切です。届いたメールへの返信で確かめており、メール以外の手段(電話など)という規程に合いません。(五)が欠けています。
  • ウ (二)は不適切です。切り離して保管する世代がありません。(六)は不適切です。検査の対象から外す承認は、デザイン部長ではなく情報システム部が行います。(一)と(五)が欠けています。
  • エ (七)は不適切です。届いたメールへの返信では、メール以外の手段で確かめたことになりません。(一)が欠けています。
  • カ (四)は不適切です。半年に 1 回以上の戻す試験をしないことになります。(六)は不適切です。承認は情報システム部が行います。(三)と(五)が欠けています。
  • キ (二)は不適切です。切り離して保管する世代がありません。(四)は不適切です。戻す試験をしないことになります。(七)は不適切です。メールへの返信で確かめています。(一)、(三)、(五)が欠けています。
  • ク (六)は不適切です。検査の対象から外す承認は、デザイン部長ではなく情報システム部が行います。(三)が欠けています。
  • ケ (四)は不適切です。半年に 1 回以上の戻す試験をしないことになります。(一)が欠けています。
  • コ (二)は不適切です。切り離して保管する世代がありません。(六)は不適切です。承認は情報システム部が行います。(七)は不適切です。メールへの返信で確かめています。(一)、(三)、(五)が欠けています。

覚えておくこと

  • バックアップは、規程で決めた世代の数と保管のしかた(切り離した保管など)を守る。ネットワークから切り離した世代があると、まとめて暗号化されにくい。戻せることも定期的に試験で確かめる
  • マルウェア対策の例外(検査の対象から外す、マクロを実行する)は、規程で決めた承認者と確認の手段に従う
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