分野 F|相続・事業承継
事業承継対策
過去の公開問題では、M&Aの手法(事業譲渡と株式譲渡)の違いを問う問題が、5回分で1問出ています。
最終更新
よく出る形
- M&Aの手法(事業譲渡と株式譲渡)の違いを、不適切な記述として問う(5回分で1問)
- 自社株買いや役員退職金の原資づくりも、事業承継の問題の選択肢に並ぶ(別テーマの問題で1問)
覚えること
- 事業承継の方法:一般に、親族内承継、従業員承継(役員・従業員が継ぐ)、M&A(会社の外)の3つに分ける
- 株式譲渡:株主が株式を売る方法。会社の法人格は変わらず、契約や許認可は原則そのまま続く
- 簿外債務(帳簿にない債務)・偶発債務:株式譲渡では会社に残り、譲受け側が引き継ぐ
- 事業譲渡:譲り渡す事業・財産の範囲を、当事者が個別に合意して決める。簿外債務などを遮断しやすい
- 事業譲渡の承認:事業の全部や重要な一部の譲渡は原則、株主総会の特別決議(出席した株主の議決権の3分の2以上出どころ)が必要
- 承認が要らない例:事業譲渡の相手が、会社法で定める特別支配会社のとき
- 競業の禁止:事業を譲渡した会社は、別段の意思表示がなければ、同一・隣接の市町村で譲渡の日から20年間出どころは同一事業を行えない
- 競業の禁止の特約:同一事業を行わない特約の効力は、譲渡の日から30年出どころの期間内に限る
- 自社株買い(自己株式の取得):会社が株主との合意で自社株式を有償で取得する
- 自社株買いの決議:株主総会で、取得する株式の数、交付する金銭等の内容と総額、取得できる期間(1年出どころを超えない)を定める
- 自社株買い:特定の株主だけから取得するときは、他の株主が自分も売主に加えるよう請求できるのが原則
- 自社株買いの税:株主の受取額のうち、みなし配当(配当とみなされる額)を除く部分は、譲渡所得等の収入金額とみなされる
- 種類株式:配当、議決権、譲渡制限、取得請求、取得条項などの内容が異なる株式を、定款に定めて発行できる
- 議決権制限株式:議決権を行使できる事項に制限のある株式。一般に、後継者以外に渡して議決権を後継者に集める
- 拒否権付株式(通称:黄金株):株主総会などの決議に加え、その種類株主総会の決議も必要とする株式
- 取得条項付株式:一定の事由が生じたことを条件に、会社が株主から取得できる株式
- 役員退職金:適正な額は損金(税務上の費用)に算入できる。時期は原則、株主総会の決議等で額が確定した日の属する事業年度
- 役員退職金の原資:法人が契約者・死亡保険金受取人、経営者が被保険者の終身保険などに加入する方法がある
- 自社株の評価引下げ:一般に、役員退職金の支給などで会社の利益や純資産を減らす対策がある
- 持株会社:一般に、後継者が出資した持株会社が、現経営者から自社株を買い取る方法がある
ひっかけ
- 簿外債務を遮断しやすいのは事業譲渡。株式譲渡は会社ごと引き継ぐので、債務も残る
- 事業譲渡は原則、株主総会の承認が必要で、譲渡した会社には競業禁止がかかる。株式譲渡は売り手が株主
想定問題
4問(四答択一式)。選ぶと、その場で正解と解説が開きます。
M&Aの手法に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
正解:1 株式譲渡によるM&Aでは、譲渡し側の会社の簿外債務や偶発債務のリスクを、譲受け側の会社は一般に遮断しやすい。
ポイント
M&Aの手法のうち、事業譲渡と株式譲渡の違いを見分けて、最も不適切な記述を選ぶ問題です。
考え方と解き方
簿外債務や偶発債務を引き継ぐかどうかは、会社ごと移る株式譲渡か、範囲を個別に決める事業譲渡かで変わります。2つの手法を取りちがえると、適切な記述が不適切に見えます。
- 株式譲渡は、株主が株式を売るだけで会社そのものは変わらないので、簿外債務や偶発債務も会社に残ります。譲受け側が遮断しやすいのは、承継する範囲を個別に合意して決める事業譲渡のほうです。
- 1)は、遮断しやすいのを株式譲渡としているので、不適切です。したがって、最も不適切なのは 1 です。正しくは、事業譲渡によるM&Aでは、譲受け側の会社は、簿外債務や偶発債務のリスクを一般に遮断しやすい、です。
ほかの選択肢
- 2 事業の全部の譲渡は、効力発生日の前日までに、原則として株主総会の決議による承認が必要です。この決議は特別決議(出席した株主の議決権の3分の2以上)なので、適切です。
- 3 株式譲渡は、株主が株式を売る取引で、対価は売った株主が受け取ります。会社の資産や事業が移るのではないので、適切です。
- 4 事業を譲渡した会社は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村とこれに隣接する市町村の区域内で、譲渡の日から20年間は同一の事業を行えません(競業の禁止、会社法第21条第1項)。適切です。
覚えておくこと
- 簿外債務(帳簿にない債務)・偶発債務:株式譲渡では会社に残り、譲受け側が引き継ぐ
- 事業譲渡の承認:事業の全部や重要な一部の譲渡は原則、株主総会の特別決議(出席した株主の議決権の3分の2以上)が必要
- 競業の禁止:事業を譲渡した会社は、別段の意思表示がなければ、同一・隣接の市町村で譲渡の日から20年間は同一事業を行えない
(テーマ・覚えること)
自社株買い(自己株式の取得)に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
正解:3 会社が特定の株主だけから自己株式を取得する場合、他の株主は、原則として、自分も売主に加えるよう請求することができる。
ポイント
自社株買いの手続と、売った株主の課税の扱いを問う問題です。
考え方と解き方
自社株買いは、会社が株主から株式を買い戻す取引なので、手続は会社法、売った株主の課税は所得税の決まりで見ます。決議をする機関と、他の株主の権利を取りちがえるのが間違えやすい所です。
- 会社が株主との合意で自己株式を有償で取得するには、株主総会で、取得する株式の数、交付する金銭等の内容と総額、取得できる期間を定めます。
- 特定の株主だけから取得するときは、その旨も株主総会の決議で定め、ほかの株主は、原則として、自分も売主に加えるよう請求できます。3)は、この内容と同じです。したがって、最も適切なのは 3 です。
ほかの選択肢
- 1 全額を配当所得としている所が違います。受け取る額のうち、みなし配当とされる部分を除いた額が、株式等の譲渡所得等の収入金額とみなされます。
- 2 特定の株主だけから取得する旨を取締役会の決議のみで定められるとしている所が違います。正しくは、株主総会の決議で定めます。
- 4 定款に定めるとしている所が違います。取得する株式の数や対価の総額などは、定款ではなく、株主総会の決議で定めます。
覚えておくこと
- 自社株買いの決議:株主総会で、取得する株式の数、交付する金銭等の内容と総額、取得できる期間(1年を超えない)を定める
- 自社株買い:特定の株主だけから取得するときは、他の株主が自分も売主に加えるよう請求できるのが原則
(テーマ・覚えること)
種類株式に関する次の記述の空欄(ア)〜(ウ)にあてはまる語句の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。
正解:2 (ア)議決権制限株式、(イ)拒否権付株式、(ウ)取得条項付株式
ポイント
種類株式の名前と内容を結びつける問題です。
考え方と解き方
種類株式は、何について内容を変えたかで名前が決まります。議決権、決議の要件、取得の仕方のどれを変えた株式なのかを、語句と対にして覚えていないと取りちがえます。
- 議決権を行使できる事項に制限をつけた株式が議決権制限株式で、これが(ア)です。株主総会などの決議のほかに種類株主総会の決議も必要とする株式が拒否権付株式(通称:黄金株)で、これが(イ)です。
- 一定の事由が生じたことを条件に会社が株主から取得できる株式が取得条項付株式で、これが(ウ)です。したがって、最も適切なのは 2 (ア)議決権制限株式、(イ)拒否権付株式、(ウ)取得条項付株式 です。
ほかの選択肢
- 1 (ア)と(イ)が入れかわっています。議決権を行使できる事項に制限をつけたのは議決権制限株式で、種類株主総会の決議も必要とするのが拒否権付株式です。(ウ)は合っています。
- 3 (ウ)が違います。取得請求権付株式は、株主が会社に取得を請求できる株式です。会社が一定の事由を条件に取得できるのは取得条項付株式です。(ア)(イ)は合っています。
- 4 (イ)が違います。譲渡制限株式は、譲渡による取得に会社の承認を要する株式です。種類株主総会の決議も必要とするのは拒否権付株式です。(ア)(ウ)は合っています。
覚えておくこと
- 種類株式:配当、議決権、譲渡制限、取得請求、取得条項などの内容が異なる株式を、定款に定めて発行できる
- 拒否権付株式(通称:黄金株):株主総会などの決議に加え、その種類株主総会の決議も必要とする株式
- 取得条項付株式:一定の事由が生じたことを条件に、会社が株主から取得できる株式
(テーマ・覚えること)
自社株対策および事業承継対策に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
正解:4 役員退職金は、取締役会で内定した金額を確定前の事業年度に未払金に計上すれば、その事業年度の損金の額に算入される。
ポイント
役員退職金、事業譲渡の承認、自社株買いの手続について、最も不適切な記述を選ぶ問題です。
考え方と解き方
役員退職金の損金算入は、金額が適正かどうかと、いつの事業年度に入れるかの2点で見ます。内定しただけで入れてよいと思うと、不適切な記述に気づけません。
- 役員退職金の損金算入の時期は、原則として、株主総会の決議等によって退職金の額が具体的に確定した日の属する事業年度です。確定前の事業年度に内定額を未払金に計上しても、その時点では損金に算入できません。
- 4)は、内定額の未払金計上で損金に算入できるとしているので、不適切です。したがって、最も不適切なのは 4 です。正しくは、確定前の事業年度に内定額を未払金に計上しても、その事業年度の損金の額に算入することはできない、です。
ほかの選択肢
- 1 法人が役員に支給する退職金のうち適正な額のものは、損金の額に算入されます。適切です。
- 2 事業譲渡の相手方が会社法に定める特別支配会社のときは、譲渡会社の株主総会の承認は要りません(会社法第468条第1項)。適切です。
- 3 自己株式の取得で株主総会が定める取得期間は、1年を超えることができません。適切です。
覚えておくこと
- 役員退職金:適正な額は損金(税務上の費用)に算入できる。時期は原則、株主総会の決議等で額が確定した日の属する事業年度
- 承認が要らない例:事業譲渡の相手が、会社法で定める特別支配会社のとき
- 自社株買いの決議:株主総会で、取得する株式の数、交付する金銭等の内容と総額、取得できる期間(1年を超えない)を定める
(テーマ・覚えること)
このテーマの公開問題
公開問題を解く(1問)この本文の数字の出どころ
- 事業譲渡の譲渡会社の競業禁止の期間(別段の意思表示がない場合) 20年間
- 事業譲渡で競業をしない特約の効力が認められる期間の上限 30年
- 自己株式の取得(株主との合意による)で株主総会が定める取得期間の上限 1年
- 株主総会の特別決議の可決要件 出席した株主の議決権の3分の2以上
同じ分野のテーマ(相続・事業承継)
- 民法の贈与契約過去の公開問題では、民法上の贈与に関する記述を選ぶ問題が、5回分で3問出ています。
- 贈与税の課税財産と暦年課税過去の公開問題では、贈与税の課税財産・みなし贈与財産を選ぶ問題が2問、暦年課税の贈与税の計算を選ぶ問題が2問、5回分で合わせて4問出ています。
- 住宅・教育資金などの贈与の非課税過去の公開問題では、5回分にはまだ出ていませんが、出題範囲にある論点をまとめています。
- 贈与税の配偶者控除と相続時精算課税過去の公開問題では、贈与税の配偶者控除が2問、相続時精算課税が2問、5回分で合わせて4問出ています。
- 相続人・法定相続分・承認と放棄過去の公開問題では、親族の範囲が1問、法定相続人を選ぶ問題が1問、法定相続分が2問、相続の承認と放棄が2問、5回分で合わせて6問出ています。
- 遺産分割・配偶者居住権・相続登記過去の公開問題では、遺産分割の方法と手続が2問、配偶者居住権が1問、相続登記の義務化が1問、5回分で合わせて4問出ています。
- 成年後見制度過去の公開問題では、任意後見制度が1問、法定後見制度が1問、5回分で合わせて2問出ています。
- 遺言と遺留分過去の公開問題では、遺言の方式や撤回、検認の記述が2問、遺言でできる事項と遺留分を侵害する遺言の効力が1問、5回分で合わせて3問出ています。
- 相続税の課税価格と基礎控除過去の公開問題では、遺産に係る基礎控除額を問う問題が、記述で1問、計算で1問、5回分で合わせて2問出ています。
- 相続税額の計算と申告過去の公開問題では、配偶者の税額軽減を問う問題が2問、申告と納付を問う問題が2問、2割加算などの税額の計算を問う問題が1問、5回分で合わせて5問出ています。
- 金融資産・動産の評価過去の公開問題では、預貯金・公社債・生命保険契約に関する権利などの評価を問う記述の問題が1問、上場株式の評価額を求める計算問題が1問、5回分で合わせて2問出ています。
- 取引相場のない株式の評価過去の公開問題では、取引相場のない株式の評価方式を問う問題が、5回分で2問出ています。
- 宅地・貸家・借地権の評価過去の公開問題では、宅地の相続税評価で最も不適切な記述を選ぶ問題が、5回分で3問出ています。
- 小規模宅地等の特例過去の公開問題では、小規模宅地等の特例の適用条件を問う記述が3問、限度面積と減額割合を問う空欄の問題が1問、5回分で合わせて4問出ています。
- 会社法と会社の基礎過去の公開問題では、会社法の基本を問う「最も不適切」の記述問題が、5回分で2問出ています。
- 事業承継税制と円滑化法過去の公開問題では、遺留分に関する民法の特例の問題が1問、贈与税の納税猶予の特例を含む事業承継対策の問題が1問、5回分で合わせて2問出ています。
- 相続と保険の活用過去の公開問題では、生命保険を活用した相続対策の問題が、5回分で1問出ています。